ずいぶん前の話になりますが、北陸に行った折、ふらりと入った居酒屋のメニューに「へしこ」の文字を見つけました。 九州ではめったにお目にかかれない一品です。 どういうものかは知っていたものの、口にするのは初めてでした。
鯖のヘシコだったのですが、品よくスライスされたものをつまむと、ひねた脂の薫りが素晴らしい酒肴です。
「九州から来たのですが、むこうではこういう発酵系の珍味って少ないんです」と言えば、 「あの、こちらは冬になると漁ができないものですから、その間の保存食の意味でこういう仕立てが発達したんです。 福井県の郷土料理です」と店主は答えてくれました。
寒風干し、エタリの塩辛、あとはこのへしこさえ仕込んでおけば、 天気が悪くてよい酒の肴が手に入らない場合でも、私ども酒飲みの、心強い見方になってくれることだと思います。
へしこには鯖や鰯、烏賊、河豚等が使われるそうですが、今回鯵で仕込んでみます。 新鮮なものを用意してウロコをかいてワタを抜き、水洗いしてから水気をふいて、まんべんなく塩をまぶします。 軽く重石をして、冷蔵庫で一週間ぐらい寝かせます。
一週間寝かせたら、魚から少々水気が出ていると思いますのでそれをよくふいてから、ヌカ床に埋めます。
ヌカ床の作り方はこちらをごらんください→ぬか漬け。
今回大豆抜きでヌカ床をこしらえました。 さてこれから約半年間に渡り、冷蔵庫で寝かせます。
半年間首を長くして待ちます。
さて半年間が経過しました。 ヌカ床から魚を取り出し、ヌカをぬぐってからいただきます。 ヌカ漬け特有の香りと、熟成された魚の複雑な風味が合わさり、今すぐに一升瓶を取りに走り出したくなります。
軽く炙って酒肴やお茶漬けで楽しみますが、今回あえて生のままいただきました。
更新日:23/03/05
公開日:11/09/05