まずはカチカチの干しナマコに塩をまぶして揉むのです。 て、こんなカチカチなもの揉めませんが、とにかく教えられた通りにやってみます。
塩もみしたナマコを、100℃のお湯に浸します。 グツグツ煮るのではなく浸すんです。 湯温を適宜確認しながら100℃を維持する事3時間。 特に変化がみられないので、ポットに浸して放っときました。
翌朝確認するとオーッ、戻っていますビヨーンと伸びてます。 この状態でもまだキュウリ並の硬度を持ちます干しナマコは。
ここでハサミを持ち出してナマコの両端を切り落とし、腹もジョキッと割いてしまいます。
水洗いしながら内側をきれいに掃除します。
ここで再び湯に漬けますが、今度の湯温は70℃です。 2、3時間も置けば、みるみるナマコは戻りまして、このままだと生前サイズまでいっちゃうのでは、という勢いですが、 ある程度戻ったところで湯から引き上げます。
プニンプニンした質感のところ調理開始です。 ナマコを食べやすい大きさに切りまして、ニンニク、ショウガ、ネギのみじん切りと共に胡麻油で炒めます。 味付けは醤油で行います。 こうして完成したのがページトップの「炒め干しナマコ」です。
自らの手でこしらえた干しナマコを戻して食べるなんて万感胸に迫ります。 ではいざ実食!と口にしてみたところがですね・・・・・・なんちゅうかこう、もっと華々しい旨さのものを期待してたんです。
が、なんて言うんでしょう・・・「プニプニしたモノを炒めて喰ってるな今」というそのまんまの感想しか抱けないのです。
師匠に言われた通りに調理したハズなんですが、これはとても人様に勧められる代物ではありません。 ひとまずラップをかけて冷蔵庫へ片付けたのでした、ガッカリ。
翌朝の事です。 冷蔵庫を漁っていて「何これ?」と現れてたのは、かの炒めナマコでした。 ウッカリ忘れていましたその存在。 半分ラップを開き、何気につまんでみたのが良かったんです。
ムチャクチャ旨いんですよね何故か。
何も手を加えてないのに美味しくなっとるんです炒めナマコ。 そこで目を閉じて、理由を考えながら次々と口にしたところ解りました。
まず冷たい事。 次に、置いた事でナマコに味が染み込んだ事。 この二つが、劇的に美味しさを増した理由です。 食感にも変化が見られ、ちょうど「ピータンの白身部分」に近い感じです見た目も似てますし。 あそういえば「サラダにしても美味しいよ」と言ってました師匠が。
ということで、戻したナマコは切り分けて、ドレッシングに一晩浸しておくのが良! と今のところ考えておりますが、今しばらく調理の工夫をしてみます。
臼田素娥さんは邱永漢さんのお姉さんで、料理研究家です。 伊丹十三の『小説より奇なり』にて、臼田さんは干しナマコについてこう話していました。
海鼠が一番大変ですよ。 もどしすぎるとグニャッてなるし、ちょっと足りんかったら、お客さんに出す時まだ硬いし、だからあれは三日、いや四日ぐらい前からやりますから。
ああいう料理は、あなたが来るから、ワタシ前から用意しましたよっていう料理です。
やはり奥深いものです干しナマコは。
更新日:23/03/18
公開日:14/05/09