日本の料理
日本料理は旬の素材を六割、旬が過ぎ去っていく名残の素材を二割、これから旬を迎える走りの食材を二割で構成します。 旬の異なる三品をそ揃えるのが最高のもてなしです。 これは過去、現在、未来という時間の流れを意識したものです。
新鮮な食材が手に入る日本では、加熱を主とする中国、フランス料理と違い、生食を中心とします。 日本料理において、生物、焼き物は素材が7、技術が3。 一方煮物は技術が重要です。
日本料理の基本は「椀とサシ」。 だしの味と刺身の「活き」です。
春は苦み、夏は酸味、秋は渋味、冬は油味。 季節で求める味が違います。
日本の食文化の流れ
- 縄文時代:縄文土器による煮炊きが始まる。 狩猟、採集、漁労などの食料採集が中心。
- 弥生時代:稲作が始まり、穀類の安定供給が実現。 集団生活や階級社会などの基礎を作り、国家誕生の要因となる。 家畜の飼育もこの時代から。
- 古墳時代:穀類を蒸すための「かまど」が登場し、主食、副食の食べ方が定着していった。
- 奈良時代:中国文化の影響を受け、貴族階級の食生活が贅沢になる一方で、仏教の影響により肉食禁止が広まった。
- 平安時代:今日みられるような日本料理や作法などの基礎が築かれた。
- 鎌倉時代:武士の食事は簡素かつ合理的で、一日三回食をとるようになった。 禅僧の影響により、精進料理も発達。
- 室町時代:本膳料理が確立された。 茶道と結びついた懐石料理が生まれた。
- 安土桃山時代:海外との貿易により新しい作物、食品、調理法がもたらされ、食生活に大きな影響を与えた。
- 江戸時代:都市人口が急増した江戸の食文化は、白米食の定着や外食ブームの到来等多彩な広がりをみせた。
- 明治時代〜現代:明治時代に肉食が解禁され、急速に欧米化が進んだ。 昭和になり、外食産業の発達や、生活習慣病、
食品添加物問題等発生。
日本の行事食
- 正月:おせち料理、雑煮、餅
- 鏡開き:鏡餅を入れた汁粉
- 節分:いわし料理
- 彼岸:ぼたもち(春)、おはぎ(秋)
- 盆:魚料理
- 月見:月見だんご
- 冬至:かぼちゃ料理
- 大晦日:年越しそば
五節句の節供
- 人日 1月7日:七草がゆ
- 上巳 3月3日(桃の節句):白酒、ひしもち、ちらしずし、はまぐりの潮汁
- 端午 5月5日(端午の節句):ちまき、かしわもち
- 七夕 7月7日(星祭り):そうめん
- 重陽 9月9日(菊の節句):栗もち、菊花酒
日本料理の様式
精進料理
肉や魚(生ぐさ物)を使わず、豆腐や野菜等の植物性食品だけで調理した料理。 五法、五味、五色を重視し、仏事の料理として用いられる。
※五法:生、揚げる、煮る、焼く、蒸す。 五味:甘味、塩味、酸味、辛味、苦味。 五色:赤、青(緑)、黄、白、黒。
本膳料理
日本料理の基本的な形式で、饗の膳(本膳、二の膳、三の膳)、酒の礼式の式三献からなる。 一汁三菜 〜 三汁十一菜まであり、現在は婚礼料理等として残る。
懐石料理
茶懐石ともよばれ、濃い抹茶を美味しく飲むための、お茶席で出す軽い食事。 一汁三菜が基本。 茶道の流派により細かく決まりが違う。
普茶料理
江戸時代初期に隠元禅師により広められた中国風の精進料理。 二汁六菜を基本にし、肉、魚を用いない野菜中心の料理。 大皿料理をそれぞれ直箸で食べる。
卓袱料理
江戸時代にポルトガルやオランダ、中国との貿易拠点だった長崎で生まれた和風中華料理。 西欧料理の要素も含まれている事から和華蘭(わからん)料理とも言われている。 現在は長崎の郷土料理として知られる。
料理名や、大皿料理をつつきあうスタイルは中国風。 卓袱の語源は卓(テーブル)、袱(テーブルクロス)を意味する中国語だという説がある。
※中国南方の言葉で「朱塗りの円卓」を意味する言葉から「卓袱」というようになったという説も。
会席料理
江戸時代に生まれた宴会向きの料理。
会席料理とは
本膳料理の流れをくみ、江戸時代後期から酒を楽しむ料理として発達、大衆化したもの。
和食のコース料理のことで、冠婚葬祭の時に出される料理も会席料理。
会席料理の流れ
- 先付:前菜、お通し、つき出し、酒の肴のこと。 先付けは、酒の肴の意味もあるので、酒を楽しみたいときは残しておいてよい。
- 吸い物:すまし仕立ての汁物のこと。 のどを洗う意味もある。 お椀のフタを開けたら、膳の外、お椀の横にフタの内側を上に向けて置く。 食べ終わったら、フタを元通りにかぶせる。
- お造り:刺身の。
- 煮物:炊き合わせ。
- 焼き物:魚介類や肉を焼いたもの。
- 揚げ物:天ぷら盛り合わせなど。
- 蒸し物:茶碗蒸しなど。
- 酢の物:和え物のこともある。
- お食事:ご飯、止め(留め)椀(味噌汁)、香の物(漬物)。
- 菓子:季節の果物は水菓子という。 皮や種が出た場合、もとの器にまとめておく。
2〜5は必ず出る基本の一汁三菜。 6〜8はオプション。
会席料理は一品づつ器に盛り付けるのが基本。 食べるマナーとしては、膳の上に何品も置かないこと。
会席料理のメニューは「お品書き」と書かれる。 持ち帰ってもよい。
懐石料理の流れ
- 飯椀、汁椀、向付:少量のご飯と味噌汁、刺身。 ご飯と汁はおかわりをするのが作法。
- 煮物椀:汁張りの煮物でメインディッシュ的な存在。
- 焼き物鉢:魚介類の焼き物。 大皿で出されるので、自分の分だけ向付の器に取って、次の人に回す。
- 預け鉢、強肴:炊き合わせや和え物など
- 小吸い物椀:あっさりした吸い物。 箸洗いとも呼ばれる。
- 八寸:酒の肴二種。 海のものと山のものが取り合わされ、山を手前に、海を奥に盛る。 三種類のこともあり、酒を酌み交わす。
- 湯桶、香の物:こげ飯を入れた塩気のある湯で、これを残った飯にかけてきれいに食べきる。 空になっている汁椀にもお湯を注いで、お椀をきれいにして終了。
- 主菓子:生菓子。
- 抹茶:濃茶。
1〜3は必ず出される一汁三菜。 4〜6はオプション。 7までで懐石終了。
懐紙を持参し、空になった器をふいて、きちんと片付けるのが懐石の作法。
日本の料理のツボ
- 献立の中に豆腐と味噌と胡麻を入れると日本度アップ。 この三品は日本料理に欠かせません。
- 日本では古来より特別な日を「はれ」、日常を「け」と呼んできた。 母の日、父の日、誕生日、クリスマスなどは現代の「はれ」の日といえる。
- 日本では、古墳時代に伝わった仏教の影響により、飛鳥時代に初めて肉食禁止令が出された。 これにより、奈良時代から四つ足の獣肉を避ける習慣が広まり、
明治時代に肉食が解禁されるまで続いた。
- 『調理師速習レッスン』を参考にしました。
おさらい
日本の料理を知り、食の知識を深める。
11/11/29