「刺身は大好きだけど、自分で切って食べるのはどうもねえ・・・」
という声をたまに耳にします。 たしかにお店で食べる、プロの手による刺身は美しく又、旨いものですが、 だからといって自宅で刺身をおいしく食べるのは不可能なのかといえばそうでもありません。
ちょっとした気遣いで見栄えがするし、おいしくなるものです。
まずは刺身のツマの定番「大根のせん切り」からです。
大根の皮をむいて、「かつらむき」にします。
かつらむきとは何かというと、7、8センチに筒切りにした大根を帯状に薄くむいていくことです。
鮨屋の職人さんは、このかつらむきを紙のような薄さでやってのける驚愕の技を持ちますが、そんなに薄く切りきれるわけはないので、自分ができる、精一杯の薄さでむくようにしましょう。
かつらむきにした大根を適当な長さに切り分けてそろえ、重ねてからせん切りにしていきます。
せん切りにした大根をしばらく水にさらしてパリッとさせるとできあがりです(ページトップ画像)。 水気をとってから、刺身の小脇にそえます。
市販の刺身パックに入っているツマや、お店で食べるツマと比べると少し太くて不ぞろいですが、かえってそれが手作り感をかもし出していて好きです。
※大根の他にんじん、きゅうり、かぼちゃを用いることもあります。
板状に切った大根をオレンジの線のように切り分けます。
それをしばらく塩水に浸しておくと、しんなりとしてきます。
それを三角に組み上げまして、
今度は真水にしばらく浸してパリリとさせます。
水気をとってから刺身の小脇にどうぞ。 まるでテトラポットのような、立体的なツマです。
きゅうりを「かつらむき」にします。
かつらむきのきゅうりを、オレンジの線のように細い三角形に切り分けます。
これを箸等細い棒に巻きつけてから、
しばらく真水にさらしておくと、クルッっとらせん状の姿になります。
よりきゅうりのできあがりです。 ニンジンでも同じように作れますよ。
一枚ずつはがして重ね、千切りにすると良いものですが、単に縦半分に切り、その後せん切りにして水にさらしても十分です。
お次は主役である刺身の切り方について説明します。 まずは細造りからです。
身に厚みがありすぎる場合は、包丁を水平に入れて半分の厚みにします。
あとは厚さと同じ幅に切っていけばよいだけの話です。
これが細造りです。 高く積み上げるとボリューム感が出ます(杉盛りとも呼びます)。
身をサイコロ状に切ると、角造りです。
サクの右側から切り分けていきます。 刃元から包丁を当てて、スーッと引ききります。
刃先まで引いたら身は切り離されているハズですから、そのまま包丁で切り身を右によせます。
テンポよく次々に包丁を引き、右によせていくことを繰り返せば平造りのできあがりです。 寄せた切り身の列を崩さないように包丁ですくいあげて器に盛り付けます。
※身が柔らかい魚は厚め、硬い場合は薄めに切るとよいです。 平造りに段をつけすぎると見栄えがしなくなりますよ。
サクの左側から切り分けていきます。 刃を寝かせて、平造りの半分の厚みぐらいになるよう、そぐように包丁を入れていきます。 身の繊維を垂直に断ち切る方向から包丁を入れることが重要で、そいでいる最中に「カタカタカタ・・・」と魚の繊維が離れていくような手ごたえがある場合、身の向きが逆の恐れがあります。
切り落とす身を軽くおさえながら、包丁の刃元から刃先まで、刃渡り全部をつかう気持ちで引き切ります。
そぎ取った身は、裏返して器に並べます。 なるべく薄く、面積が広くなるように切り分けます。
冊に対して刃をナナメに入れて切っていく手法。
冊に対して刃を垂直に入れ切っていく手法。
それでは最後に「紙塩」という技法で鯛をシメ、そぎ造りにしておひらきといたします。
まな板の上に塩を振り、その上に和紙を置きます。 水と酒を半々で割ったものを和紙の上に吹きかけまして、その上に鯛の切り身を置きます。
切り身の上から和紙をかぶせ、塩をまいてから、また水と酒を半々で割ったものを和紙の上に吹きかけます。 このまま2時間ばかりおけば食べることができます。
昆布で〆たわけでもないのに身がしっとりと締まり、 刺身で出しても「この鯛何でこんなに美味しいの?何かした?」と、食べる人に塩の風味すら感じさせません。
でしゃばらず、それでいて存在感のある素敵な調理法です。
※紙塩は、美味しんぼ27より
「つま」の事を「けん」ともいいますが、厳密にいうと次のように分けられます。
菊には消毒作用があるので刺身に添えて食べてよい。
そもそもつまは、口の中にある魚の脂気を無くすために食べるものです。 いわば一旦味をリセットするため刺身の合間につまむものです。 なので醤油につける必要性はありません。
11/02/14