蛤に関してはですね、どちらが上か下か問題で随分悩まされてきましたが、もうそんな事はどうだって良いんです。
蛤は、頼んでもいないのに焼けたら「パカ」と開いてくれるから、美味しいおつゆが無駄になってしまう事があったんですね。
なら火が通っても開かないようにしたら良いじゃありませんか。 なんかその方が、蛤が行儀よく見えるじゃないですか。
その秘技を、今から動画解説と共にお知らせいたします。
蛤の蝶番ありますね。 そこをよく見ると、ちょうど空豆のお歯黒みたいに黒い線が真一文字に走っているのを確認できます。
そこへ包丁でジリリと切れ目を入れるんです。 貝は固いので刃が入らないような気がしますけど、この部分は柔らかいので楽に作業できるでしょう。
これで煮えても蛤は貝を開く事ができなくなりました。
今から蒸したい蛤の全てに切れ目を入れるのではなく、ひとつだけはそのままの状態で蒸す事に着目してください。
これは何故かと申しますと、貝が開くという事は火が通った合図であり、仮に全ての蛤に切れ目を入れてしまったら、火が通ったかどうかを確認できず蒸しすぎてしまう懸念が生まれるのです。
なのでひとつの蛤はそのままの状態で蒸し、この人がパカしたらその他一同も煮えているというテスターの役割を担っていただくのでした。
テスターを鍋の中央に配置したら、日本酒をヒタヒタに注いでフタをし点火します。 カサが少ない分、すぐに湯気が上がるでしょう。
そうしましたら一呼吸おいて、鍋のフタを開きます。 すると見事にテスターだけがパカしているので火からおろして器に盛る、という寸法です。
行儀よく口が閉じたまま並べられた蛤の上から旨味にあふれる煮汁をたらし、貝を手動で開いたならば、その絶妙な煮加減によりプクリと膨らんだ蛤をしげしげ鑑賞したあげく、再度身の上から煮汁をたらし、胡椒を振って、いただきます。
蛤を食べきっても、器には煮汁が残っているハズですから大切に、最後の一滴まで飲み干します。
19/03/03