「ねぎま」と聞くと反射的に焼き鳥のネギマ(鶏とネギを交互に串に刺したもの)を思い浮かべてしまうのですが、実はネギマにはもうひとつあるのです。
それはネギマ鍋。 ねぎま鍋の「ねぎま」とは「ネギとマグロ」のことであります。 昔の日本では、鮪は赤身が好まれており、脂身の多いトロはさほど珍重されなかった (捨てられていたとか)そうです。 そんなトロを使って作るのが今回のネギマ鍋なのです。
作り方は丸谷才一氏の「軽いつづら」によります。
さて。 まずは上質なトロを調達してまいりましょう………。 もしも、もしもあなたは上質なトロが手に入ったら、ネギマ鍋にして食いますか、食いますか!? トロは、刺身にして食べたいでしょう。 いや、 そうするべきでしょう。 昔は赤身が好まれ云々は理解しますが、今現在は、鮪のトロっつったらあなた、そりゃ、大変なものですぞ。 鍋にほうり込んだりしてはいけません。 断じて、刺身で食べるべきであります。
とまあレシピに入る前に、トロに異常な反応をしてしまったわけですが、丸谷さんによると、ネギマ鍋に使用するマグロは「中トロ」であると書いてあります。 中トロですよ。 中トロっつったらあなた、煮て食うよりも生で…という話はもうよしとして、とにかく鮪の中トロを買ってくるわけです。
とかなんとか言いながら、ついにオイは中トロを煮て食うという暴挙に出ることができませんでした。 今回オイが使用したのは、まぐろはマグロでも、カジキマグロです。 正直に、白状します。
カジキといえば、さほど脂は乗っていないはず。 葱鮪鍋は、トロの脂と、ネギのハーモニーを楽しむものであるからして…それは重々承知しております。 だけどもオイは、大トロだろうが中トロ だろうが、とにかくトロ関係を、鍋にして食うことが、できないわけです。 そんなこと言ったら、カジキマグロだって、刺身で食ったら案外イケるよ。 そうなんです。 とにかく、マグロを刺身で食いたいところ をガマンして煮て食うという所にネギマ鍋の本質があると思います。
そんなカジキマグ…、いや中トロを、適当な大きさに切り分けます。 ちゃんとやるならば、さいの目 に切るそうです。 刺身で食べるわけではないので、大きくたって小さくたってどうでもいいと、思います。
ネギの白い部分を食べやすい大きさに切ります。
鍋にお湯と日本酒をあわせて火にかけます。 煮立ったところで、みりん、醤油を入れます。 自分好みの味付けに仕上げましょう。
※ショウガの絞り汁も合います。
はい、ネギマ鍋のできあがりです。 マグロとネギを少しづつ入れながら食べるわけです。 薬味には七味唐辛子がよく合います。
念のため言っておきますが、カジキでも美味しくできました。 半生程度に火をいれて、ネギといっしょにカブリ、っとやりゃあ、そりゃ天国です。 オイはマズいものを美味しいとは言いません本当っす。
ちなみに、ねぎま鍋で有名な浅草の一文というお店の鍋には何が入っているのかを書いてきます。 まず鍋にツユが張ってあり、みじん切りのネギが散らしてあります。 具のほうは、大トロと中トロの中間ぐらいのトロの切り身と、ネギ、豆腐、白菜、シイタケ、春菊など、らしいです。 これは東海林さんのおでんの丸かじり内「あたらの壁のねぎま鍋」にそう書いてありました。 ネギマ鍋に対する東海林さんの葛藤は大したものです。
今風のネギマは、ダシにネギとマグロの身を入れて煮たもの。
昔風のネギマは、ネギを鍋底一面に敷いて、酒とダシをちょっと加えて火にかけて、ネギの上にマグロの刺身を乗せたもの。 マグロにうっすら火が通ったらサンショの粉をかけて食べる。
ネギの白い部分を5センチぐらいに切って、醤油に20分漬けておく。 鍋に酒を入れて煮立ったら、 醤油ネギを一面に並べ、その上に中トロを乗せる。 火が通ったら、すかさず食べる。 そしてまたネギを並べ・・・と繰り返すのが、 嵐山光三郎のネギマです。 酔ってきたら、湯を注いで「ネギマ汁」として汁を肴に飲むそうです。 やはり赤身よりもトロを使ったほうが旨いそうです。
07/11/11