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空前絶後のテールスープ〜このスープ一本で昭和からやってきたんよ

空前絶後のテールスープ〜このスープ一本で昭和からやってきたんよ

「お父さんと二人で何十年もやってきて、一度閉めたんよ。 そしたらお客さんたちが署名運動してくれてね、場所を変えてまた始めたんよ」

テールスープ一本で昭和から平成、そして次は何ですかね、とにかく今日まで頑張ってきたオカミさんの言葉です。

人気を聞きつけて向かえばアットホームを絵に描いたような和やかな店内でお客はほぼ常連さんでした。

時折オカミさんがカウンターで新聞を読みながらテールスープをススっているお客さんにアレコレ指図して小間使いしているのが個人的には大変興味を覚えまして観察していたら、なんとこの方がこの店のマスターだったという事が店を出る際判明しましてバカウケした夜でした。

店に入るやいなや、どのお客もテールスープをススっているのかといえばそうではありません。 まずはホルモン食べたり、カルビつまんだりしてしみじみお酒を楽しんだ後、一人一杯のテールスープを注文し、有難く飲み干してはお会計という流れとなります。

中にはいきなりテールしている人もチラホラ見かけはしましたが。

店の閉店時間は22時前後とかなり早めで、その頃になるとつまみの追加注文をしようとすれば「え、テールスープ飲むやろ、結構ボリュームあるけえもうこの辺で食べるの止めとき」とオーダーを断られます(笑)。

それくらい、飲んでもらいたい渾身のテールスープなのです。

さて、普通テールスープというとまずテールを炒めたりブーケガルニを放り込んで煮込んだりとモノモノしくなりがちですが、この店の料理のコンセプトはアッサリ。 ホルモンとか焼肉等コッテリ系のメニューも並びますがどれもコテコテしてなくてイヤなクセがまったくないんです。

これは丁寧な下処理と、ショウガを多用する事で生まれた特徴です。


そうしましたら、まず鍋底にテールを置いたら脇にテールと同じサイズのタマネギを薄皮をむいて丸のまま並べます。

皮付のまま刻んだショウガを入れたら水をたっぷり張って煮はじめます。 沸騰するまでは強火。 その後は仕上げまで弱火です。

一時間…二時間と煮てゆくにしたがいタマネギは次第にトロけてグズグズになってくるでしょう。 このタマネギの状態こそが煮る時間のひとつの目安となりまして、まだ一目見てタマネギだと分かるウチは煮込みがまったく足りてません。

次第にスープが茶褐色を帯びてきて、タマネギがバラバラになる頃。 そうですねおよそ三時間。 この辺で仕上げに入ります。

味付けは醤油だけ!

なのに底の見えない深い旨味が生まれています。 たんなるシッポを煮るだけなのに、腑に落ちない美味しさが生み出される驚異にア然です。

器にテールを置いて、周囲にスープを張り巡らしたら刻みネギを山盛りし、胡椒を振って完成です。

まずスープの品質に誰もが驚くでしょう。 そしてあたかも着痩せした人みたいに見た目以上に肉がこびりついているテール本体の美味しさに気づくハズです。 ダシガラになっおらず、ちゃんの肉に旨味が残っているのです!

はじめは行儀よく食べていたとしても、終いには手をベトベタさせながら目の前の皿に夢中になっている自分にハタと気付くでしょう。

この一心不乱に食べ進むお客さんの姿こそ、オカミさんが今日まで頑張ってこれた原動力となっているのです。

スープを飲み干して、皿に残るのは骨だけになり感動の余韻に浸っている時、ホールスタッフとして頑張っている娘さんが近寄ってきました。

「これから美味しい食べ方を教えてやるけえ」

いえいえもう食べ切りましたが、と返せばそれにややカブせ気味におっしゃったのが「骨が旨いけえ」という謎の発言でした。

何でも骨の一端をかじるとあっけなく崩れて穴が開くから、そこに口を当ててチュウチュウしなさいという強制でした。

半信半疑でやってみると、骨は予想以上にモロく、空いた穴からは骨髄がジュルと飛び出してきまして。

濃い白子のような旨味に、ついまた酒を注文しようとしましたが「もう閉めるけん帰り」とアッサリ断られたのでした(完)。

レシピのツボ

  • 完成したスープの量は賞味350cc程度になります。
  • テールは250gで1000円程度です安。
  • 味が足りない時は塩を微量加えます。

19/03/20


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