ぶらりと入ったお店が、残念だった時の絶望感ったらありませんよね。
この店の暖簾をくぐった時がまさにそうだったのですが、顔を合わせるなり店主とおぼしき人物は、
「いらっしゃい」とも言わず「何か用?」という顔をして私を見ています。
正直そのままキビスを返して無かった事にしようかとも考えましたが、それだと何か負けた気分になるので「そっちがその気なら」とズズズいと中に入り、
堂々と腰掛ける事にしました椅子に。
作務衣を着込んで白髭を生やし、奥様と思われる方も同じ出で立ちをしておりますが客が目の前に座ったにも関わらず「何しに来たの?」感が消えません。
それならいっそ席を立ち、颯爽と店を後にしてしまおうとも思いましたが何かシャクに障るので品書きを見せて、と言えば普通に差し出してくれました。
飲食店を経営しているのに、極度の人見知り夫婦だったのです(笑)。
肴をいくつか注文し、飲んでいるうち次第に打ち解けてきて「この店での過ごし方」が身についてきました。
あちらから何かを勧めてきたりどうこう言ってきたりはしませんが、こちらから聞けば丁寧に教えてくれます。
へしこをかじりながら今度は熱燗を注文した所、目についたのが「湯豆腐」の文字でして。
湯豆腐ならこれまでいくつもご案内させていただいており、ひとつの到達点に達した自負もありましたので、よほどの事が無い限りヒザを打つような事はありませんが、こちらの湯豆腐は着眼点が素晴らしかったですね、
温泉の湯豆腐を再現しているのです。
自慢の温泉水を用いて湯豆腐を供する宿のそれを、見事に再現しておるのでした。
作り方はこうです。
まず鍋に水を張って火にかけます。 ふつふつ沸いてきたら、塩、重曹を入れてそれらをよく溶かします。
そしたら絹ごし豆腐を入れ、ことこと15分間煮込むんです。
次第に豆腐の角が丸くなってきて、それに伴い湯は白濁してくるでしょう。
こうなったら食べ頃で、生姜とネギを添え、醤油にくぐらせて口中に運びこみます。
湯豆腐にはだし醤油を用いる事もありますが、この湯豆腐の場合は醤油がよく合います。
まず豆腐を半丁、湯に完全に溶かしてからもう半丁を入れて煮ながら食べるのもオススメですよ。
22/10/20