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冬瓜スープ
冬瓜スープ

夏は冬瓜スープ

あなたのお宅には、古くから一族に伝わる秘伝の薬、というものがありますか?

何聞いてんでしょう唐突に恐縮です(笑)。

そんな重たい話ではなくですね、たとえばウチならそれに当たるのが梅酢です。 梅干しの真っ赤な汁ですねあの。

子供の頃お腹を壊そうものならば、即婆ちゃんは戸棚から梅酢を引っ張り出しては舐めさせてくれました。

「コイば飲んどけばすぐ治る!」と。

それが不思議とバツグンの効果があり、ピタリと症状が改善するから面白いです。

頭痛がする時も、風邪を引いた時も、何か気分が冴えない時でさえ、婆ちゃんに相談すると、とにかく梅酢が出てきたものでした。

なので現代においても私は梅酢信者であり、やれ出張があれば梅酢を携行し、飲みすぎて二日酔いになれば梅酢を舐めて、今日まで元気に生きてまいりました。

そういえば他にも婆ちゃんは秘薬も持っていましたね。 打撲や捻挫をすれば裏山へ入っていって草をもいできて、それをすり鉢でおろしては、小麦粉と合わせて練り、障子紙にそれを塗りつけては患部へペタリと張ってくれるのです。

ウソみたいに治っちゃう所が素敵です。

当時はその有難みをよく考えていませんでしたが今ならば充分理解できます。 「婆ちゃん、ありがとね! もっと出世するけん見とってね!!」

というように家の秘薬は梅酢、というか婆ちゃん自身だったワケでありますが、去年の冬にお会いした沖縄出身のナイスガイが面白い事を教えてくれましてね。 今回ご案内する驚きの美味しさを持つ冬瓜スープは、彼一族秘伝の百薬だと言います。

作り方

別にめったに手に入らない食材がふんだんに使われているから再現無理、という代物ではありません。 誰でも入手できる、驚くほど少ない食材でこの料理は生まれます。

まず頃の良い冬瓜ですね、これをゲットするのが一番重要かもしれません。 冬瓜という名前なのに、暑くなれば店先でよく見るようになりますよね冬瓜。

その冬瓜を、ご自宅にある鍋の大きさと相談し、鍋にスッポリ入る程度の冬瓜を選ぶんです。

冬瓜が巨大すぎれば鍋に入らずこの料理にとりかかる事すらできません。

今回は八百屋に並んでいた冬瓜の中でも長すぎず、大きすぎず、持つと梨の上等品みたいにズッリシ重たい1.3キロのものを入手できました。

その冬瓜のヘタをはねます。

すると内部にワタと種が入っていますから、それを匙でほじほじスッカリかき出してしまいます。

その穴へ、ブツ切りした鶏肉を入れるんですね。 この際モモ肉がオススメですが、何お好みの部位、たとえば巨大冬瓜を用いて盛大に作る場合は骨付き鶏を用いると良いでしょう。

めいいっぱい鶏を詰めたら、日本酒を並々注いでヘタでフタをします。

あとは鍋に入れて周囲に水を、冬瓜の腰の高さまで張り、弱火でトロトロ三時間(誤変換で参事官と出てきた笑)煮込むだけなんです。

時間が来て、フタを開けば油の玉の美しい、黄金色のスープが目に飛び込んでくるでしょう。 塩を茶匙一杯入れたらハイ準備完了です。

熱々を丸のまま、食卓へ鎮座させましょう。

ヘタを開いて歓声がワァ、冬瓜の壁を崩して鶏肉と混ぜるとため息がフゥ、取り分けて一口ススれば思わず瞳を閉じて、これまでこの料理をどうして作って食べなかったのかと自責の念にかられる事でしょう。

冬瓜、鶏、塩、酒。 たったこれだけの食材が織り成す風味とは到底考えられないのですから。

ちなみにこの料理、本式には体調の優れない人にスープだけを全部飲ませ、残る鶏と冬瓜の肉は、その家族で平らげるものだそうです。

スープを飲み干したご当人は、翌朝ケロッとしていると、言います。

21/07/22


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