赤ジゾと梅酢が合わさった瞬間、ガラリと鮮やかなワインレッドが現れるのを目にした瞬間、自家製梅干の「とりこ」になりました。
以後10年にわたり仕込み続けている手法を公開し、毎年微調整を入れているところです。
仕込み方はまったく同じでも、その年々で、梅干の出来はずいぶん違ってきます。
それが梅干作りの面白さでもあり又、難しさでもあります。
と小難しいように書きましたけど、作り方はいたって簡単なのが、梅干です。 だって材料は梅、塩、紫蘇の3つだけですからね、まずは梅1キロでも買ってきて、気軽に試してみてください。
今回、
を作ります。
店先で梅を見かけるようになったら、形がよくて、キレイな梅を選びます。
梅干の梅には、完熟して黄色になりはじめたものが向いています。 買ったばかりのまだ梅が、深い緑色で固い時は、日陰に何日か置いて熟れさせます。
※ちなみに青梅は梅酒に向いています!
しばらく日カゲに置いといたら、こんな感じに完熟して黄色くなります。 この瞬間をお見逃しなく! さっそく作業開始です。
※極端に熟れすぎて、グズグズなった梅を使うのはよくありません。 何度か作ってみて、頃合いを覚えましょう!
梅を半日ぐらい水に漬けます。 その後水揚げし、水気をしっかりと切ります。
梅干作りはちょっとした事でカビが生えたりしますから、清潔な環境で作業します。 以降小マメに焼酎で殺菌しながら作業を進めてまいります。
梅干作り専用の霧吹きを用意しておくと便利です(100円ショップで買えます霧吹き)。 これに焼酎を入れて「シャー」っと吹くのです。
梅の水気をフキンでぬぐいながら、ついでに竹串でヘタを一個ずつチマチマほじっていきます。 梅を持つ手にも焼酎を吹きかけ、殺菌しながら作業をします。
こういう地道な作業には人手が必要ですので、家族総出でヘタとりに励むのもよいかと思われます。
ヘタを取った梅を塩漬けにしますが、漬けこむ容器にも焼酎を吹いておきましょう。
まずは容器の底に塩をまぶし、その上に梅を並べ、また塩、梅、塩、梅という風に入れていきます。 最後に余った塩は、上からザーッとかけます。 そのためには、最初の段階では、塩は少なめに加えておく必要があります。 塩と梅をよくなじませるつもりで作業します。
今回は塩分20%の梅干ですから、梅を5kg使う場合は塩を、
1kg(1000g)用意する事になります。
全部塩を振り終えたら重石を乗せて、フタををして日の当たらない場所に安置しておきます。 重石の重さは梅と同じ重さです。 つまり梅が5kgだったら、重石は5kgです。
という声をよく耳にしますが、基本を押さえておけばまず上がってくるものです。 どうしても上がってこない時は、重石をさらに重くする方法があります。 私も初心者の頃は、よく水が上がらない事がありましたが、 重石を梅の重さと同じにすると、それは解消されました。 一般的には梅と同じ重さの重石をする、というと、ちょっと重すぎるような印象もありますが、カビたり、水が上がってこない不安をぬぐえるとなれば、これが楽です。
又、塩が少なくても水は上がりにくいものです。 たとえば塩分10%の低塩梅干がそうです。 用いる梅のサイズによっても微妙に塩分を変えるとよい、という話もありますが、私はこのところ、 20%で仕込んだ昔ならではの酸っぱい梅干に落ち着いています。
さてこんな感じに梅を詰めてまいります。
重石をして2、3日置いておけば、水気(白梅酢)が上がってきます。
梅がヒタヒタに隠れるぐらい梅酢が出ていたら、すごくイイ感じです。 そこまで梅酢が出ていなかったら、さらに何日か漬けておきます。
梅が梅酢よりも上に出ていたらカビが生えたりします。
ですから梅が梅酢に完全に漬かっている状態が最良という事です。
赤紫蘇(シソ)が出回りはじめるまでこのまま安置しておきましょう。
赤じそが出回り始めたら、好きな分量買ってきます。 束ごとサッと水洗いしてから、2,3時間陰干しにします。
シソがしんなりしたら、とりこみます。
※シソは朝露を浴びているもの、すなわち午前中に収穫したものを使わなければよい色の梅干にならない、という話を梅干屋さんに聞きました。
とりこんだ赤紫蘇の葉を茎からちぎり取ります。
赤紫蘇に分量外の塩を振り、揉みます。 ひたすら揉んでいくと、どんどん小さく固まっていきます。 力を込めて、念入りに揉みます。 私はすり鉢を使って揉みこみます。
シソを揉んでいるとじんわりとアクがでてきます。 このアクを捨てて、さらにもう一度丹念に揉みます。 もしもアクの出が悪かったら、塩を少し足します。
「これでもか!」と固く絞り、アクを出し尽くします。 こうしてシソのボールができました。
※シソにも防腐作用があります。
アク抜きがすんだシソに、上がってきた梅の汁(白梅酢)をかけます。
すると一瞬で、透明だった白梅酢が鮮やかなワインレッドへと変化します! これを見れただけでも梅干を自分でつけてみてよかったな、としみじみ思えます。
シノの葉にはシソニンという色素が含まれており、酸を加えると赤くなる性質を持っています。 梅の中に含まれているクエン酸やリンゴ酸と反応し、この美しい色は生まれるのです。
ワインレッドの梅酢!と、もんだシソ、そして梅干を混ぜこみながら、容器へ移します。
そしてフタをして、梅雨明けの土用の丑の日あたりまで日の当たらない所で保管します。 梅酢は梅とシソがヒタヒタに隠れるぐらいあれば最良です。
※梅雨時にはカビをチェックするために時々容器の中の様子を覗いてみましょう。
梅雨明けしました! 晴れが続くかどうか天気予報のチェックをし、三日間続けて梅を日干しします。
「絶対に3日間干すこと!」と決まっているワケではありません。 環境により、あまり長く干しすぎると梅干が固くなってしまいますので、手で触った感触や、見た目で干し加減を見極めます。
晴れた朝梅干を並べ、天日に当てて、夜に梅酢の中へ戻します。 これを3回繰り返します。 梅と同時に、シソ、梅酢の入った容器も天日に当てておきます。
三日間干したらお疲れ様でした! これにて自家製梅干の完成です。 これから始まる梅干ライフを満喫しましょう! すぐに食べれますが、3年置けば魅惑の美味しさ。 梅干のエイジングを楽しんでください。
とここで、ウチの梅干をご紹介させていただきます。 十年モノがこれなんです。 やや色が暗くなり、酸っぱさは弱まります。 果肉は柔らかい、というよりもコシがない感じです。
三年モノです。 程よく酸味が落ち着いて、果肉はしっとりしています。 個人的には一番の食べ頃は、この三年物だと思います。
もしも梅干にカビが生えてしまった場合、早急にカビが生えた梅またはシソを取り出して、焼酎で洗います。 そして天日干ししてから元に戻します。 容器内にカビが残っていないか要チェックです。
梅干の表面に塩が吹く事があります。
私は毎年小梅も漬けておりますが、天日に干す際に普通のサイズの梅と同じように干すと塩をふいてしまいます。
なので小梅の場合、2日間だけ干すようにしています。
塩を吹いた場合、洗ってから陰干しし、梅赤酢に漬け直せばよみがえります。
醤油ができる以前に使われていた調味料です。
紫蘇を干して、すり鉢ですると、美味しい自家製の「ゆかり」ができあがります。
梅酢を使います。
檀流です。
一見「日の丸弁当」。 ところが!
イワシやサバを煮付ける際に梅干を加えると生臭みが抜けます。
梅自体は1500年ほど前中国より渡来したといわれます。 梅干は、枕草子に登場するので、少なくとも十世紀には存在していたようです。 薬用として高貴な人々に利用されました。
庶民の口に入るようになったのは鎌倉時代以降で、戦国時代は兵糧として重宝されました。
ここまでの梅干は紫蘇を用いない白梅干であり、紫蘇が使われはじめたのは、いつ頃なのかはハッキリしません。
梅干は酸っぱいのでてっきり酸性と思われがちですが、超アルカリ性な食品です。 現代の食生活は酸性寄りになりがちなので、梅干を食べてバランスをとります。 お酒、ごはん、肉、魚などの酸性の食べ物を中和する働きもあります。
カルシウムやミネラルを豊富に含みますので、毎日少しずつでも摂取したいところです。
梅干に含まれるクエン酸は体内の乳酸を分解します。 つまり疲労回復効果もありまして、至れり尽くせりの梅干なのでした。
南高梅は和歌山県みなべ町で生まれました。 原木は、町内に住む高田貞楠さんの梅園にあった大粒の梅をつける一本の木です。
戦後間もない頃、『梅優良母樹調査選定委員会』が作られ、県立南部高校の竹中勝太郎先生が委員長になりました。 そして調査をした結果、高田さんの梅が一番良いと判断し、 農林省の種苗名称登録に出願されました。
そこで「品種名を何にしよう?」と考えた結果、竹中さんは南部高校の通称名である『南高』をつけました。 竹中氏いわく「こんなに有名になるとは思ってもいなかった!軽いノリで名前をつけたんです」と。
更新日:23/06/29
公開日:05/10/05