突出しが、煮た大豆ですよ……シビレますよね。
上の写真は百年以上続いている酒場のもので、「みそ豆」という名前ながらみその味がまったくしない、まんま煮た大豆の入った小鉢です。
一粒ずつつまみながらコクッとぬる燗を呑んでゆくと、大豆の旨味が身に沁みます。
アテを二三注文し、引き続き呑み続けますが、この豆は会計を済ませる直前まで残ってくれておりました。
別に大切にのけておいたワケでもないのに、です。
どうやら後で考えると、この豆を立て続けに何粒も食べようとはまず思いません。 そこまで興奮する味もでないからです。
これが枝豆となると話は別で、サヤから歯でしごき出すというイベントも楽しいし、ほんのりした塩加減がまた、次のひとサヤへと指を伸ばす魅力があります。
でも老舗の豆は、酒を含んで一粒取り上げては、しげしげ眺めても大豆以外の何者でもなく、口に入れて噛んでも豊かな大豆の旨味はするものの「うん、いま大豆を食べてるな」以外の感想が浮かんでこないから、酒をたらふく飲む間中お供をしてくれたのでしょう。
この豆を肴にやってると、いくぶん普段より呑むペースがゆったりするようです。
あらかじめ煮て柔らかくなっている大豆も売られておりますが、むしろそちらのほうが主流のような売られ方を店ではしてますが、
乾燥大豆をじっくり水で戻して炊いた豆の旨味にはかないません。 ぜひ、時間をかけても乾燥大豆を尊重する人生でありたいです。
何も難しい仕事ではなく、乾燥大豆をボールに移して水を張り、一晩置いたら漬け汁ごと鍋に移して柔らかくなるまで煮るだけです(この際1%の食塩水に漬けて戻すと豆が柔らかくなり早く煮えます)。
途中、マメにアクをすくいとったり、時折一粒つまみ上げて口に含んでみたりしながら煮てゆくと楽しいですね。
一時間も煮れば十分でしょう。 そのまま蒸らして調理に用います。
みそ豆を出す店は一軒だけではありません、社会には様々なみそ豆が存在しているのです。
こちらでは煮あがった豆を器に盛り、刻みネギをたっぷり乗せたら青のりを散らし、からしを添えて醤油をたらす、という姿をしておりました。
これは突出しにするにはもったいない、堂々とメニューに載せておいてもらいたく、空にしたらもう一度いただきたい豆でした。
私一番のお気に入りはこの酢大豆です。 飲んでいるとどうしても酸味を体が欲してきます。 この豆は酢といいながら酢の味がまったくしないのかといえばそうでなく、ほんのり心地よい酸味が響きます。
つまんでいるうち、単に酢と醤油に漬けるだけでは生まれない香気に気づくでしょう。 紫蘇が忍ばせてあるんですね。 器に盛る際その紫蘇を添えても良いのでしょうが、姿は見せずその薫りだけで参加するという姿勢こそ食べ手にサプライズを与える一手となっています。
動画の後半では、昆布やスルメで味を増強した酢大豆もご案内しています、ぜひ肴にお役立てください。
19/10/08