主人は京の旧家の出。 奥さんは宮城の網本がルーツという飲み仲間の夫婦がおりまして、どうして仲良くなったのかといえば、私が酒が強かったからです。
夫婦そろってメチャ酒強いんですが、特にご主人は私の知る限りで最強の酒飲みです。 いくら飲んでも顔色ひとつ変えないし乱れもしないので、それならいっそ水でも飲んどけば、って皆で笑っています。
その彼のペースについていけたのは、後にも先にも私だけだそうで(私は思い切り酔います)。
以来事あるごとにお呼びを受けて飲みに行ってたんです。
超高級店から場末の酒場まで、色んなお店を教わりました。 何しろ酒飲み夫婦ですから、都内のお店にめっぽう詳しく、
中でも銀座の路地裏の大衆酒場でさんざん飲んだのが忘れられません。 ちょうど一年前でしょうか、
壁に貼られた品書きの端から端まで食べてみよう、という話になり勇んで飲み食いしていた所、ちょうど1/3あたりまで来た所で鳥豆腐と出会ってしまったのです。
あまりの美味しさに三人は顔を見合わせて、当初の計画は中止し延々とこの鍋をリピートする事となったのでした。
「牡蠣豆腐」や「とり皮なべ」みたいに老舗であるほどその鍋の中身そのまんまを料理名にしている事が多く、この鳥豆腐もまさにその通りの品でして、
「鳥の旨味で豆腐を食べる」
をテーマとしています。 鶏は絶対モモ肉でなければ旨味が出ません。 手羽先はかさばるし、ムネ肉では油が不足しますし、豆腐に栄養を与える為にはモモでなければムリなんです。
一口大に切って鍋に入れ、かつおだしを注いで火にかけます。
沸いたらコトコト10分煮て、鶏の旨味をスープに十分引き出します。 続いて肉を寄せたら空き地に豆腐を入れ、もう10分静かに煮て豆腐に旨味を吸わせます。
別途ほうれん草や春菊を茹でておき、仕上げに乗せたら準備完了。
まず黄金色のスープを一口ススってみてください、言葉が出ないほど美味しいでしょう。
続いて豆腐をひき上げて、濃いめのポン酢の中へドブンと沈めていただきます。
こんな旨い豆腐食べた事がないハズです。
薬味はネギと一味でどうぞ。 豆腐はおかわり必至ですから、ぜひ鍋脇に沢山用意ください。
ややコシが抜けた鶏がまた良い味出してます。
食べ切った後にはご飯や麺を入れて〆、とか途中プランしてますが、いかんせん美味しすぎるスープですから奪い合うようにして各自呑み干し鍋はいつの間にか空になってしまうのでした。
20/11/10