ローストビーフの脇に添えられた、あのスカスカしたモノこそヨークシャー・プディングです。
ヨークシャー・プディングもすごく美味い。 ただし、これはプディングと名がついているがプディングではなく、 バターを原料にした、ロースト・ビーフの付け合せである。
コリン ジョイス『「ニッポン社会」入門』より
檀さんの『美味放浪記』に、ローストビーフに関するこんなくだりがあります。
もとより、ローストビーフも、そのイギリス人が愛好する家庭料理である。
たとえば、チャーチルなど、随分と自慢のローストビーフを自分で作っていたと、聞いている。
ローストビーフは、実に簡単な料理であって、牛肉をオーブンの中で丸焼きにし、これをスライスして出すだけの事だから、 その出来は千差万別。 それこそ、味噌汁が家庭ごとに違って、むずかしいように、むずかしい。
焼き上げる肉の部分。 その焼き加減。 オーブンの大きさ。 熱。
先ず大雑把に二通りの方法があるようだが、一つは、まったく何の加工もしないで、脂身を上に、 肉をオーブンに放り込んで焼くだけ。
例えば、肩に近い部分の肋骨付ロースだったら、肋骨がついているのだから、ほとんど紐をかける必要もないが、 骨をはずしてしまうと、紐なしでは、ねじれゆがむ。
脂肪が少なく感じられれば、上部に牛脂をからげて、肋骨を下にしながら、焼くだけである。
ただ、その焼き加減だけが、おいしさを決定する。
外側はカリリと焦げているのに、骨から中心に至る部分は、血のしたたるような桜色だ。
この血のしたたるような桜色から、トキ色になり、紫、褐色、やがてカリリと焦げている表面の変化を、 完全に作り上げることが大変にむずかしい。
前のロンドン滞在中に、サボイで、はじめて、この完全なローストビーフを、スライスしながら皿に載せられた時の驚きと云ったらなかった。 その肉汁のしたたるローストビーフのおいしさに驚嘆した思い出がある。
丁度「フナヤキ」と同じように、メリケン粉を牛乳とバターでといて、ローストビーフの余熱で焼くのを、 「ヨークシャ・プディング」と云っているが、そのヨークシャ・プッディングを、四角に切って、 ローストビーフと一緒に喰べた味わいが忘れられなかった。
由来、私はローストビーフの信奉者である。
檀一雄『美味放浪記』より
いざ作るとなれば、ローストビーフを焼く傍らで楽に仕込めるのがヨークシャー・プディングです。
ローストビーフを焼いてる間に生地を仕込みます。 ボールに卵一個を割り落とし、よく溶いてから小麦粉を1/2カップ加えて練ります。
ここへ牛乳1/2カップを少しずつ注ぎいれて練ります。
すかさずローストビーフよりしたたる脂を大さじ2ばかりたらしこみます。 脂が足りない場合は何かしらの油を足して大さじ2とします。
軽く塩、胡椒も振って、よく合わせます。
生地を半時間ばかり寝かせてから焼きます。 ローストビーフが焼けたところで取り出して、今度は200度にオーブンを設定し、15分程焼くのです。
生地はバターを塗った小さめの耐熱容器に流した方が形よくボコボコします。 生地の深さは1センチ程度にとどめたほうが、綺麗に焼けます。
焼き上がりはコンモリ可愛らしいものですが、放っておくと、ヘコんでしまう儚き姿なのです。
気分はまさにブリティッシュす。
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15/03/31