正月帰省した際、新年あけまして、何が楽しみかといえば煮しめです。 野菜を中心に淡く煮たもので、「これ味ついてんの?」というような見た目をしていますが、 口にしてみるとほんのりと、それでいてたしかな味が広がります。 大好きなんですよね。
正月、どこの家庭を訪ねてみても、煮しめに行き当たります。 材料は大体同じですが、味にはバラつきがあるものです。 見た目以上に甘かったり、辛かったり、やけに黒い煮しめ、というのも食べたことがありました。
どっちかっていうと、自分で作って食べるというよりも、誰かが作ったものを頂くほうが、煮しめは美味しいような気がしていたのですが、 今回煮しめを作ってみようと思い立ったのは、行く先々で、煮しめの作り方を聞いてみたからなのでした。
あるお宅では「作り方っちゅう作り方は無いんですけどね、まあそうですね、野菜を切って、水で煮て、醤油をたらしてから仕上げにカツオダシの素をパラリとやるのがコツですかね」とか、
「オイくん、煮しめは煮る順番が大事ですよ。 え、何その順番はどれからですって? うーんどれからだったかしら、忘れちゃった。 ま、ウチはテキトーですよホホホ」とか、
「まずはじめに厚揚げを投入して旨みを出してから野菜を煮る」とか、
「いの一番に味の素」とか、「砂糖の大量投入」、
「あらかじめすべての材料を個別に下茹でしておいてからひとつの鍋で煮るのがベスト」と、いうように様々な作り方がありました。
ともあれ煮しめは作り方がシンプルだからこそ、その家の奥様方がこれまでに培ってきた調理技術がキメテになるのではなかろうか、という感想を持ちました。
いろんな作り方をふまえた上で、我流の煮しめを作ることにします。
子供の頃、何が腹立つかといえば、コンニャクがねじりコンニャク(手綱切り)になっていることでした。
「ねじってどーするねじって!」といつもコンニャクをつまむたびに思っておりました。 ねじっさえいなければ、さぞ旨かろうなあ、と思っていました。
はっきりいって、ムダな事だと思っていたのです。
ところがどっこい、こんにゃくは気まぐれにねじられるのではなく、味の通り、火の通りをよくするため、その他諸々の理由によりねじられているものなのでした。
そのねじり方はこうです。 まずはコンニャクを縦長の5ミリ厚程度に切り分けまして、中心部にスッツと包丁で切れ目を入れます。
そしてその切れ目へコンニャクの頭を押し込んで、引っ張り出せば、簡単にねじれてしまうコンニャクなのでした。 誤解しててごめんよ。
ごぼうは皮を洗ってから薄く切り分け、水にさらしておきます。 今回皮はむいていません。 表面の土を、丁寧に洗い流しました。
椎茸は椎茸でも、干し椎茸です。 前日から水に浸しておいて火にかけて、柔らかく戻したものです。
煮汁は大事なダシでありますから、これをベースにしてカツオダシを抽出しておきます。
その他ニンジン、レンコン、里芋等適宜、 厚揚げは是非用意しておきたいところです。
「鶏肉は必須」というご家庭や、「ニンジンやレンコンは飾り切りにせねばならぬ」という親方、「具材の品数は新年めでたく末広がりの八品にせよ」 という大御所もおりましたが自由にヤルことにします。
面倒なことが大嫌いなので、すべての食材をいっぺんに煮合わせます。 すべての具材を鍋に入れ、シイタケ+カツオダシをヒタヒタに注ぎこみます。
火にかけて、煮立ったら弱火にし、15分ほど煮込みます。 落としブタをどうぞお忘れなく。
薄口醤油とみりんを加え、具材が芯まで煮えるまで煮込みます。 落としブタをどうぞお忘れなく。
火を止める前にもう一度味見をします。 物足りないようでしたら、塩少々を加えてみたり、醤油やみりんを足したりします。
煮しめは冷めてからつまむので、味をある程度しっかりつけておかないと物足りなくなります。
味見がすんだら煮汁につけたまま冷まして味をふくませ、器に盛り付けます。
11/1/31