上の写真は都内の酒場で食べた刺身です。
菊が散らしてありますよね。 「菊にゃ消毒作用のあるけん刺身に添えられとったら是非つまんどかんね!」と教えてくれたのは叔父でした。
でも九州人の私からすると、刺身にネギは散らしても、菊をそうする事はまずありません。 なんでも食用菊の生産は山形が盛んだと言いますが、これは北の文化なのでしょうか。
「酒徒の家では酢を入れた熱湯で、菊をサッと茹で甘酢に漬けこんで日々の肴とす」と佐々木 久子さんの『酒縁歳時記』にあったので早速試してみたんです。
するとまあ!菊の黄色が引き立ち美しく、甘くほろ苦い花弁が舌上で溶けるではありませんか。
すかさず調理前の生菊にカブりついたところ香り良くシャキシャキした歯ざわりでまろやかな苦みに余韻で甘味がやってきます。
私はおひたしを作って初めて、菊の魅力に気づかされたのでした。
まず菊の花びらをつみとります。 湯を沸かして酢をたらしたら、花びらを入れて一瞬茹ですぐ冷水にとりしばし水にさらします。
砂糖と酢を合わせて甘酢をこしらえたらそこへ水気を切った花びらを入れて一晩漬けこみます。
そのまま肴とするもよし、何かしらのあしらいに用いるも吉、こんなに映えて使い勝手の良い食材もそうあるものではありません。
こどもの舌にはあまりうれしいものではありませんでした。
このほろ苦さとすがすがしい香りは大人になってからわかる味なのかもしれません。
酒井 玲子『四季折々の漬けもの』
母から送られてきた食用菊だ。 それを冷凍にしておいて、幾度にも分けて馳走になった。
茹でかたが上手なせいか、妻が買ってきて茹でたものより、ずっと香りがよかった。
お浸しや酢のものが大好物の私は、縁側で黄色い花びらをむしっている母の姿を思いつつ、賞味したのである。
宮尾 登美子『菊亭八尾善の人びと』
「料理ギク」ともいい旬は秋で、黄色と紫紅色があります。 品種は八重大輪の阿房宮、小型の坂本ギク等多種あります。
小型はそのまま刺身のあしらいに。 大型は花びらを酢のもの、おひたし、あえ物に用いられます。
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19/12/04