皆さん普段お味噌汁などを作るときはどのようにして出汁をとっていますか。
市販のダシの素でしょうかそれとも削り節でしょうか。 そもそも味噌汁なんてここ数年作っていないとか、味噌汁に出汁を入れるなんて初めて知ったとか、色々なご意見があるとは思いますが、 今回は鰹節を削る為の道具であるかつお節削り器のご紹介をしたいと思います。 そもそも出汁をとるのはメンドクサイ作業です。 どうせメンドクサイのならば、鰹節の塊を毎回削ってから 出汁をとってみるのもよいかもしれません。
鰹節削り器といってもピンキリあるのですが、今回オイが選んだものはモース博士の鰹節削り器です。 これは東京日本橋にある刃物屋木屋のものです。
モース博士(エドワード・シルベスター・モース)とは何者かというと、大森貝塚を発見した人物(詳しくはウイキペディアをご覧下さい)で、日本各地を旅行し、 民具を収集しました。 それらの収集品は、モース・コレクションとして、セイラム・ピーボディー博物館に所蔵されているそうです。
そのモースコレクションの中から、復元されたものがこのかつお節削り器となります。 とまあ説明するとこのようになりますが、このカツオ節削り器を選んだポイントは、デザインです。 カツオ節削り器を探して 色んな百貨店をウロチョロしたのですが、どうもピンとくる商品がない。 ホームセンターなどで売られていたものは、作りがチープすぎて「安物買いの銭失いとなる可能性大」という判断を下しました。
木屋のかつおぶし削り器は他にも数種類あり(リンク→)、桐製のものもいいいかな、 と考えたのですが、手にとってみるとなんとも気に入らない箇所があったのです(後で書きます)。 それらを総合的に判断し、モース博士の鰹節削り器を購入したのです。
これからモース博士の鰹節削り器を徹底解剖していきたいと思います。 まずは印籠蓋に注目してみましょう。 印籠とは薬入れであり、フタがはめ込み式になっていて薬の変質を防ぐという構造に 作られています。 さらに密閉性も高いために湿気が入り込みにくいという利点もありますが、なによりも蓋を閉めた時のすっきりとしたデザイン性の高さに心惹かれました。
内部に納められているカンナは簡単にとりはずすことができます。 カンナの刃はSK材で厚みがあり『モース』と、取って付けたような刻印があります。 カンナ台は樫で作られており、ズッシリと安定感 があります。 安すぎるかつおぶし削り器の場合、このカンナがいかにも安っぽいという共通点がありました。 実際鰹節を削るのはカンナなので、大いにこだわりたい部分です。
モース博士の鰹節削り器の特徴的な部分は木製のツマミと、引き出しの下の「受け」です。
上で桐製のものに気に入らない部分があったと書きましたが、その部分が引き出しのツマミだったのです。 桐製の鰹節削り器の場合、引き出しには桐ダンスの引き手のようなものが 取り付けられているのですが、その金属製の引き手の作りの悪さがイヤで、桐製を購入することを断念したのです。
桐製のほうが、防虫性がある、機密性が高いなど良い点が多かったのですが、とにかく引き手の安っぽさがいやだったので買いませんでした。 その他の部分がよく作られている分残念でしょうがありません。
とまあかつお節削り器は以上のようなパーツで構成されているわけです。
かつお節削り器も鰹節がなければただの箱。 上質の鰹節を買ってきましょう。 今回購入したお店は、長崎築町にある中嶋屋本店です。
鰹節も手に入れたことだし、さあガリガリと削りましょうか・・・・という簡単な話ではありません。 鰹節を削るにも、キチントした方法があるのです。 まずは鰹節事態の構造を知ることが大事であります。 右図の鰹節は、女節(メブシ)といいます。 女節とは魚の腹側の身で(鰤を参考にしてください)、 頭側についていたほうが頭で、尾側もそのようになります。
女節に対して、背側で作られた鰹節を男節(オブシ)とよびます。
これが男節(オブシ)です。
削るときはカンナの刃を手前に向けてからだの正面に配置し、鰹節の頭のほうから削りはじめます。 この際鰹節をよくみると、 皮のある面というのがわりますので、皮面を上にして、すなわち、皮のついていない面から削りはじめます。
しっかりと鰹節削り器を固定して、両手でしっかりと鰹節を持ち、ゆっくりと削ると上手く削れます。
横から見て、鰹節を寝かせすぎているとよくありません。
このように若干角度をつけてから削ると、鰹節が小さくなってきても削りやすくなるというわけです。 ムダがないのです、経済なのです。
※鰹節は、旨味を逃さないためにも調理に使用する直前に削りましょう!
上記の削り方をしっかりと守って削ったにもかかわらず、引き出しを開けてみるとそこには見慣れた鰹節の姿ではなく、粉々に削れてしまった残骸のような鰹節が・・・・・。
そうなんです。 鰹節を上手に削るには、鰹節の方向ばかり気にしていてはダメなのです。
あなたの鰹節が粉々に削れてしまう原因は、カンナの刃が出すぎているからなのかもしれません。
カンナの刃先は、表面よりも0.1ミリ程度出ているぐらいがよいのです。 紙一枚くらいです。 刃がそれよりも出すぎていたり、出ていなかったりする場合は、刃の出方を調整 する必要があります。
かんなの刃の調整は右のように行います。
刃を出す場合、オレンジ丸の部分を木づちで軽くちょっとずつ叩いて出します。 刃が斜めに出てしまった場合は、オレンジ小丸の位置(刃の横)、を叩いて水平に刃がでるように調整します。
一方、刃をしまう(ひっこめる)場合は、ミドリ丸の部分(小口)を叩いて調整します。
いずれも微妙な調整が必要ですので、試し削りを繰り返して絶妙のセッティングをたたき出すことが理想です。 さらにカンナの刃はじきに切れなくなってきます。 そうしたら、刃を研ぐという作業も必要 になってきますね、あーメンドクサ、でも人生に潤いを与えてくれます。
カンナの刃の出具合もチェックし、鰹節の方向も間違っていない。 でも、削ると鰹節が粉になる・・・・・。 なんて夜も眠れぬような悩みにまでなってしまった場合、鰹節本体の削る面を眺めてみてください。 その表面は平らになっているでしょうか。 それとも、まだそれほど削っていないために均一でなくデコボコしているのでしょうかどちらでしょうか。
削り始めて間もない鰹節は、元来自然のものですので起伏に富んだ形状をしております。 そんな鰹節をカンナに当てて、しばらく削るうちに、美しい、まるで黒檀のような水平な面が現れてきます。 こうなると、粉々に削れていたのが解消されるかもしれません。 粉々に削れてしまう原因は、鰹節の削り面が平らでなかったからなのかもしれないのです。
※冬の寒い時にも、鰹節が粉のように削れてしまう時があります。 その際はサッと炙ると解消されるかもしれません。
紆余曲折の末、なんとか鰹節らしく削ることができました。 キッチン内は、これまで経験したことがないような、鰹節の良い香りで満たされます。 これでもちょっと刃が出すぎかな、なんて考えたりもしています。
削りたての鰹節で出汁をとり、豆腐とわかめの味噌汁を作りました。 いつもの味噌汁だろうと意識もせずに口にした家族の反応は、見ていて面白かったです。 削りたての鰹節で出汁をとると、 まったく、味の違う、味噌汁ができます保障します。 幸せはこんなに身近にあったのかと、膝からくずれおちて両手を上げ天井を仰ぎ見ました。
削っているうちにカツオブシはみるみる小さくなり、削りにくくなってきます。
そうなったらムリして削らず、カツオブシの角煮を作ってみてはいかがでしょうか。
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07/08/24