師走に入り寒くなってまいりました。 今日長崎では雪がちらついています。 こんなに寒い日は鶏鍋でもこしらえてまったりと熱燗でも飲めば極楽です。
で、先日その極楽を満喫中に出た話題が自家製アイスクリームだったのです。 同席した女性が今ハマりにハマっていてストロベリーアイスが旨いのナンノと口角泡を飛ばしながら熱弁します。
あまりの熱さに突き動かされ、ならばひとつ手作りしてみようと思い立ったのでした。
今回アイス作りの参考書として、まずは辰巳浜子さんの名著、「料理歳時記」を本棚から取り出しました。
文明開化のお陰で、四季を通して四六時中アイスクリームが食べられる、いや、巷に満ち、山村の端々にまでアイスボックスがある、まことに嬉しい世の中になりました。
という書き出しからはじまる自家製アイスクリームの作り方です。 安くて美味しくて栄養豊富とくれば、手作りしてみないテはありません。
では早速調理開始です。 小鍋に卵黄を3つ分落とします。
そこへ砂糖80グラム、コーンスターチ大さじ1、塩ひとつまみを加えます。
3者がよく混ざり合うようかき混ぜます。
そこへ温めた牛乳を1.5カップ注ぎ込み、弱火にかけて煮立つ寸前までかき混ぜ続けます。
火からおろして一旦漉します。 冷めるまで待ちましょう。
冷ましている間に生クリーム1カップをポイップしておいてそこへ加えます。
※生クリームは冷えているほうがよく泡立ちます。
ここへレモンの皮一個分をすって加えます。 レモン風味のアイスクリームを作るわけです。
あとはこれをアイスクリームメーカーに入れて完成を待つ、という話なのですが、今回思いつきでアイスクリームを作ったものですからそんなマシンは家にありません。
それでは一体どうやってアイスクリームを作るのか? 次をごらんください。
ここに取りだしたのは、世界にただひとつ、オイ式自家製アイスクリームメーカーです。
みての通り缶ビールの上を冠きりで丸く空けただけの代物です。 こんなもんでアイスクリームを作ろうなんざあ、なにも投げやりになっているワケではありません。
空き缶で作ったのにはワケがあるのです。
アイスクリームメーカーを持っていないことに、いざ材料を混ぜ合わせてしまった後気づいたオイは、家を飛び出して散歩にでました。 歩きながらかなり考えました。 すると突如、海原雄山の顔が頭に浮かびました。 「そういや美味しんぼにアイスの作り方があったよな」
急いで家に戻り美味しんぼの並ぶ棚を捜索しました。 そしてやっぱりあったのでした。 美味しんぼ78巻です。
海原雄山は金属の筒にアイスクリームの材料を入れ、氷の入った桶に突っ込み、くるくる回転させてアイスを作ったのでした。
それをマネしようと思い立ちましたが、いざ家中探してみても「金属の筒」はどこにもみあたりません。 ゾージルシの魔法瓶で代用しようとも考えましたが、多分冷えないでしょうし、万が一冷えた場合、 どうやってアイスクリームを取り出せばよいのでしょうか!
ようやく見つけ出した金属性の筒は、茶筒でした。 しめた!と思いましたが、我が家にただひとつしかない茶筒をアイスまみれにしてしまっては、その後が恐ろしいです。 茶もダメになりますし。
そこで空き缶に行き着いたワケです。 缶に漏斗をあててアイスの素を流し込み、フタなんてありませんからラップを2重にかけて輪ゴムでとめました。
あとはこの缶を、氷の入った桶に入れ、クルクル回転させればよいのです。
しかしここでまた問題です。
缶は立てて回してはまんべんなく冷えないので寝かせて転がすよう海原先生は言います。 フタがラップ製の自家製アイス機は、真横に寝かすとアイスが流れ出てきそうな気がします。
ちょうど赤ちゃんを横だっこするように、頭を少し上に向けて横にする必要があるのです。 500mlの缶を横だっこでき、ある程度深さのある容器が見当たらなかったので困っている最中、 冷蔵庫の製氷機がぴったりだということに気づき、製氷機の氷の落ちる受け皿を冷蔵庫から取り外しました。
すでに受け皿には氷も沢山たまっていたので都合がよいというものです。 流れはこっちに向いてきました。 氷3に対して塩1を加えると、氷の温度は氷点下20℃までさがると雄山先生はいいます。 その通りに塩を凍りにまぶしつけました。
水は0度で凍りますが、アイスの材料は色んなもので構成されているので0度以下にならないと凍りません。 そこで氷に塩を加えてマイナス20度まで下げるのですが、これは塩が水に溶ける時に熱を吸収する性質があるからです。
氷点下の寝床に缶を横たえ、クルクルクルと手で回転させてやればもうアイスのできあがりです。
この光景、夏によくみかけますよね。 冷えていない缶ビールをこのように転がすとすぐキンキンに冷えるとかいうアレです。 たしか缶の底を吸盤で固定して高速回転する市販のビール急速冷却機という品物もあったハズです。 ということは、それを買えば自家製アイス作りに代用できるかも、 という話が思い浮かびましたがまだ未実験なので来年夏にでもやってみようかと思っています。
とにかくひたすら回転させること10分は経過しました。 手先がつかれるので片手ずつ交互に使い回転させます。 そういえば大体何分ぐらい回転させるとアイスが完成する、という記述は美味しんぼにはどこにもありません。 アイスが完成したときの海原先生はいつものように無表情で涼しい顔をしていました。 あの雰囲気ではものの5、6分回転させればハイできあがり、 という印象さえ受けます。 もしかすると・・・何時間も回し続けないとアイスにならないのではなかろうか?と一瞬嫌な事思い浮かべてしまいましたがもう後戻りはできません。 一度手をだした以上、絶対アイスになるまで回転をやめるつもりはないのです。
ちょうどよかった。 録りためておいた映画がいくつかあるので、それを見ながら片手間で回し続ければそれほど苦にはなりますまい。 多少重たい映画になりますけれど、 ミッドナイトエクスプレスが見つかったので鑑賞しながら回転させ続けたいと思います。
ながら回転は楽なものです。 さっきまでの苦労が嘘のようです。 自家製アイス機のいいところも見つけてしまいましたし。 どこがいいかって、アイスになっているかどうか、 確認できる窓になっているではないですかラップが! 中の様子が確認できる位置にアイス一同を移動させ、鑑賞しながら回転を続けます。 当初に比べてラップが缶の内側にヘコみ、 なんだかよく冷えているような気配です。 でもまだ液体のままのアイスなのでした。
小1時間回し続けた頃問題が起きました。 どのようにしても手が冷たくてしかたがないのです。 そりゃそうです。 氷点下20℃の氷の上を回転する缶は、やはりそれに近い温度になっているハズです。 その缶にずっと触れ続けているわけですから当然のことなのです。 映画に熱中するあまり気づきませんでしたが両手の指先の感覚がおかしくなってます。 多分今、箸をきちんと持つことはできません。 キーボードなんて打てやしないハズです。 このままでは凍傷必至、どうにかしなければなりません。
軍手をはめて回してみました。 すぐにダメだとわかりました。 だって、濡れんじゃん。 その上ちっとも冷たさの緩和になっていません。 冷たいと意識したが最後、 だんだん冷たさに敏感になっている自分に気づきました。 柚子胡椒を素手で作ってしまったあの日の記憶がよみがえります。
しかも今現在アイスの状態ときたら、若干トロミはついたものの、未だアイスクリームになっていないのですから心が折れてしまうのも仕方がありません。 のんきに映画鑑賞している場合ではなかったのです。 自家製アイス機によるアイスクリーム作り、ここでリタイアです。
何もアイス作りを放り出したわけではないんですよ。 実は回転作業をはじめる前に、缶に入りきれなかったアイスの素をボールに入れたまま冷凍庫に入れておいたのでした。
取り出してから指先でつついてみると・・・アイス特有の柔らかい感触がします。 そのままなめてみると・・・立ちくらみがするほど濃厚なアイスでした。 あとからレモンの風味が広がります。
要は、アイスの素をこしらえて、そのまま冷凍庫に小一時間入れておいただけで上等のアイスが作れてしまったわけです。 自家製装置なんて必要なかったというわけでした。(ページトップ画像)
上出来のアイスを急いで冷凍庫に戻しました。 食後のデザートに食べてもらおうと思います。 子供たちに大絶賛をされるはずです。
子供たちが夕食を食べ終わるのを見計らい、晩酌を切り上げて冷凍庫へ向かいます。 アイスを取り出し、器を並べ、いざアイスをすくい取ろうとスプーンを立てるとあれ?カチコチやないの!
さっきなめてみたときはあれほどふんわりとしていたアイスが大理石のように固まってしまっています。 思わず地団駄を踏みました。
カチコチのアイスを無理やりすくいとろうと力むと、以外にも、「シャクッ」とシャーベットのようにもろく崩れてくれました。 そのまま口に運ぶと、ふんわり感は消えうせていましたが、 風味はすばらしいものでした。 子供たちも喜んで食べてくれたのでした。
その後何度かアイスの素を作り、同じようにそのまま冷やしてみましたが、やはり冷やす時間が大事なようです。 冷やす時間が長すぎると硬くなる模様です。 すこし溶けてくるとふんわり感が若干でます。
上ではレモンの皮を混ぜ込みましたが、これをバニラにかえるとバニラアイスです。 ココアを混ぜるとチョコアイスです。 抹茶を混ぜると抹茶アイスになるのです。 ちなみにうちで人気のアイスはチョコと抹茶です。
最後になりましたが、萩昌弘さんの「男のだいどこ」にあるアイスの作り方をご紹介します。
アイスクリームという菓子は、本格につくるには、冷却時の容器の回転が非常に面倒なものだ。 口中にとけてゆくソフトな舌ざわりをきめてしまうのは、結局「冷やしかたと混ぜかた」であるらしい。
しかし、口あたりはともかく、ただ、ひたすら、味だけはいい、という品をつくるのだったら、これはきわめて、簡単すぎるほど簡単な製品であって、ああた(以下続く)・・・
身にしみてわかります。 具体的な作り方は次の通りです。
これだけです。 ちなみに生クリームがない場合は牛乳、黄身、砂糖を弱火でトロリと煮つめて冷ました後、冷凍庫に入れてもアイスはできる、とあります。
09/12/19