昔よく通った店に久しぶり顔を出したら、代替わりしてました。
なんでも今は娘さんが大将であり、自分は裏方に徹しているのだと嬉々として煙と戯れている先代。
新メニューも続々と生みだされていて、シャコを丸揚げしたのや中心をタラコにポテサラで作った太巻き等面白いものが沢山並んでいました。
なかでもイチオシなのがすき焼きを串にしたもので、いかにも焼鳥屋が発祥のこの店らしいなと感心していたら、先代曰く「コストがまったく合わないのでこれだけは止めて」とお願いしているにも関わらず、聞き入れる耳をもたない当代だそうでして(笑)。
こんなの酒に合わない要素が見つかりません。
何せすき焼きを串にしてるんですからね。 飲みながらジルジルした鍋に箸を突っこんで滴り落ちる汁を気にしながらつつましく食べるよりも、
串を持ち上げてカブりつく方が圧倒的に酒宴向きです。 もしもサンドウィッチ伯爵が日本人だったらすき焼きを食べながらハタとこれを思いついたかもしれませんね。
すき焼きといえばネギに焼き豆腐、糸こんにゃくや椎茸などの面々も思い浮かびますが、今回はそれらのすき焼きを構成する仲間たちの中から「長モノ」だけに焦点を当てて仕込みます。
ズバリ春菊とエノキですね。
このふたつが選ばれる理由はもちろん巻きやすいからです。 「糸こんを巻け」と言われてもムリですよね。 春菊は葉の生い茂り方が品種や時期によって結構異なるので、エノキを基準に巻きはじめます。 菌床栽培エノキはサイズにバラつきがありませんし。
まずエノキの石づきを切り離してひとつかみまな板に置いたら、春菊を二本並べてその脇に置き、エノキの長さに合わせてカットします。
あとはサイズの揃った両者を長めの牛肉で巻き上げるだけ。
この際の肉は何もすき焼き用である必要はなく、薄切りならばバラでもロースでも結構です。
一度巻けば要領がつかめますので次々巻いては量産しましょう。
巻き終わったら、肉巻き2本を1セットにして串刺しにします。 どうして2本セットなのか? それは後ほど判明します。 ちなみに先代が言ってましたが、この2本セット刺しこそが不採算な理由であり、せめて1本刺しに変更してくれるようお願いしても「それだと映えないワ」と却下されるらしいです(爆)。
すき焼きといえば割下です。 地方によって色んな仕込方がありますが、今回は親子丼よろしく醤油1:みりん2:出汁3の割合で調合しています。 濃いめの方が串には向いてますからそう作りました。
割下が沸いたら串を入れて片面2分ずつ煮込みます。 深鍋へ大量に割下をこしらえたら、その中にザブンと沈めて3分待てばもう煮あがりですがここは店ではありませんからこう仕込んでます。
串が煮えたら器に乗せて、肉の谷間へ卵黄を落としたら完成です。
すき焼きと言えば卵。 卵黄を突き崩したらしばしそのテラテラ輝く艶を愛で、思い切りカブりつきましょう。
二本差しの理由は、狭間に黄身を乗せるためだったのです。
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19/12/21