鴨南蛮

鴨南蛮

久しぶりに上京し、仕事を終えた後ブラブラ散策しておりました。

ついに、ようやく日常が戻りつつある事を如実に感じましたね。 春にしてはちょっと暖かすぎるような日でしたが、陽を避けようと裏通りに入れば突如出くわした大行列に目が釘付けとなりました。

バックパックを背負った外国人の姿が目立ちます。

「何やろか?」近づいてみるとそれはラーメン屋に並ぶ列であり、そのお店のウリは「鴨のスープ」なのだといいます。

とっさに店名で検索してみると、SNSで今大人気の麺処なのだとか。

そりゃあ、鴨でスープを作れば美味しいですよね。 ぼんやりいくつも作り方が頭に浮かんできました。

食べてみたいとも思いましたが、さすがにこの行列の最後尾に並ぶつもりはありません。

そこで帰郷したらまず真っ先に、もはや舌が鴨になっていますから、鴨料理をこしらえて堪能する事に決めたのでした。

早速地元で行きつけの精肉屋に向かいました。

この店は並んでいない品もお願いすれば何とか探し出してきてくれるプロ根性の塊みたいな所なのですが、

何と、鴨肉が今まったく手に入らないそうなんですよ…合鴨肉に至っても。

ワケを聞けば、昨今の社会情勢によるもので、外国産の鴨肉が一切日本に入ってこなくなったのでそれに伴い国内の資源もアッという間に枯渇して、次に入荷する見通しが立っていないのだとか…残念。

そこで片っ端からアチラコチラ連絡をしてようやく合鴨肉の置いている店を探し出し、博多まで車を走らせ入手した大切な一枚を活用して、鴨南蛮をこしらえてみようと考えたのでした。


鴨南蛮の作り方

ほとばしる油、噛めば溢れ出てくる旨味。 鶏とは比較にならないコクを持つのが鴨肉です。

日常的に作っては楽しんでいるかしわせいろをこの鴨肉で仕込めば最高の一杯になる事は明らかですが、

それだと面白くないので鴨ロースの手法を取り入れてみる事にしました。

ちなみに今回鴨のモモ肉を使っています。 胸肉、つまりロースも仕入れましたが、こちらは淡泊な風味なのでまた別の料理に活用しようと計画しておりましてね。

そんなモモ肉の皮面に、まずはうっすら格子状に切れ目を入れます。 こうする事で油の出が良くなるのです。

鍋をよく熱してから弱火に落とし、肉の皮面を下にして入れ焼きはじめます。

じきバチバチ音を立てながら油がにじみ出てくるでしょう。 それに伴い素晴らしい香気が鼻を覆うようになるでしょう。

焼きすぎたらダメですよ。

やや皮がカリッとしたら返して反対面も焼き、すぐさま肉を取り出したらアルミホイルに包みこみ、このまま10分ほど寝かすのです。

これにより肉の内部までじんわり熱が入るんです。

空いた鍋を戻してまた火にかけます。 肉が無くなった後の鍋には油がたんと残っているかと思います。

そこへかつおだし、みりん、砂糖、醤油を入れてかるく煮立てるのです。

これぞ究極と呼ぶにふさわしいおつゆで、一口味見するだけでもう天国へ行けます。

このつゆの中へ、ホイルを開いて肉を取り出し沈めて弱火で2分程煮てさらに旨味を流出させます。 そしてホイルの中にも溢れ出た旨味エキスも余さずつゆの中へといざないます。

肉を煮すぎてはいけませんよ。

肉を取り出したら好みの厚みに切り分けて皿に盛ります。 どうですが、断面のチェリーレッドを見るだけでもう興奮してきませんか?

薬味は今回わさびと柚子胡椒、そしておろし生姜を用意しましたがこれはお好みで結構です。

あたたかいつゆを器に注いだら、刻みネギをドッサリ入れて、あえて今回小ネギを使っておりますが、ここは九条ネギでも結構なのですが。

おもむろに肉をつまみ上げては薬味を乗せて、つゆの中へどっぷり浸した後頬張ります。

どうですか皆さん、なんですかこの美味しさは。 今度生まれ変わったら、私は鴨南蛮屋を開きます。

もちろん蕎麦も茹でるんです。

上等の二八蕎麦を買ってきて固めに茹でて流水でしっかり洗い、気の向くままズルズルススり込みます。

時には肉を、はたまた蕎麦を、あわよくばつゆだけをグビリとやって…目の前の鴨とおつゆは瞬く間に全部胃に収まってしまうでしょう。

これは誰にも邪魔をされたくない、一人で楽しみたい究極のご馳走なのです。


レシピのまとめ

  • つゆはあえて甘めで濃いめの味付けです。
  • あーまた食べたくなってきた。

公開日:23/04/18


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