邸さんは普段、何を食べているんです?
こう、邸 永漢氏宅でご馳走になった客は、とっさに質問しました。
すると邸さんは、「好んで食べるもののひとつに、炒飯があるかな」と答えまして。
どんな手のこんだ料理でも、美味を追求してゆくうちに単純化された味に戻ってくる。
ちょうど巧緻(こうち)を極めた細密画を描いていた人が簡単な線か、省略した手法で絵を描くようになるとの似たような心境である。
と言い放つ邸さんにとって、まさにこのチャーハンがそれにあたるのだと思います。
中華鍋にサラダ油を引いて、熱々したところでネギを刻んで加えます。 狐色になるまで、まるで焦がすかのように、炒めてまいります。
ネギが焦げると、一種えもいえぬ芳香を放ちます。
すかさず冷やご飯を冷たいまま投入し、満遍なく混ぜます。 すっかり熱くなってから、
卵を割り入れよく合わせます。
仕上げに塩、醤油、胡椒、化学調味料で調味すると、もうできあがりです。
醤油味が好きな場合は醤油で色をつけ、そうでない時は塩を効かせる感じです。
さっそくチャーハンを頬張りますけど、単にそのまま食べるのではなく、海苔で巻いて食べるんです。
さらにつけ合わせとして、冷奴あれば、言うことなしです。
伊丹十三の『小説より奇なり』にて、邱さんの姉である臼田素娥さんがこう話していました。
炒飯とネ、豆腐おいしいです。 もしオカズになにか欲しいっていったら豆腐がいいです。 炒飯と生ま豆腐っていうの相性がいいです。 冷や奴ネ。 うるさいお客さんだったらネ、炒飯出すでしょ、そしたら豆腐半丁ネ、 四角いお皿のせて、そして生姜おろして、真ん中のせて、そしてお醤油かけてそれでいいの。 一遍試してごらんなさい。
炒飯が熱くて豆腐が冷たいの。 そして生姜がきいて、とっても相性がいいの。
邱さんよると、次の三条件を満たしたものこそが、究極のチャーハンと呼べます。
心の師である邸さんは、数多くの名レシピをこの世に残されました。
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16/05/12