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ソース・エスパニョル

ソース・エスパニョルの作り方

料理界の東大と称される辻調理師専門学校の創立者、辻静雄氏が書いた、「舌の世界史」という本があります。

大変面白い本で、何度も読み返したオイのお気に入りの 本なのですが、このなかに、ソースエスパニョルの作り方というのがのっていました。

ソースエスパニョルとは、スペイン風ソースなのですが、まずはじめに言っておきますと、大変な手間がかかります。

しかし、あらゆる洋風料理に活用できるかとは思いますので、是非作り方だけでも覚えておきたいという一心で、このページを綴ります。

ちなみにこの作り方は、20世紀初頭に、フランスで行っていたやり方をそのまま説明しているのだと、辻静雄氏は書いておられました。

仔牛の肩肉

白い出し汁

ソース・エスパニョルは、白い出し汁と、茶色い出し汁が土台になるソースです。 まずはじめに、白い出し汁を作り始めてみたいと思います。

大きな寸胴鍋を用意しましょう。 ズンドーがない場合は、家にある一番大きな鍋を使います。 仔牛の肩肉を1.5kg用意します。 そしてその肉をタコ糸でキッチリしばります。

さらに、仔牛のスネ肉を2kg用意します。 この肉は骨付きなので、肉と骨をわけて、骨は細かく砕いておきます。

※分量は本に書いてあったとおりに記しております。 手に入らなかった材料は、似たようなもので済ませてあります。


フタをせずに、煮ます。

仔牛の肩肉、スネ肉、骨といっしょに、鶏ガラを2kg用意して、ズンドー鍋にいっしょに入れます。 そして7リットルの水を張り、フタをせずに、煮ます。


アク

煮立ってくると、大量のアクがでてきますので、丁寧に取り除きます。


塩

アクを取り除いた後、を30グラム程度投入します。


野菜投入

さらに人参250g、タマネギ200g、ポロネギ150gを適当な大きさに切ってほうり込み、セロリの茎150gも入れておきます。


ブーケガルニ

ここで月桂樹の葉や、タイム、パセリの茎なんかをあとで取り出せるように紐でしばったブーケガルニを投げ入れておきます。


布濃し

フタをせずに、弱火で3時間半ぐらい、グツグツと煮ていきます。 そして最後に、上に浮いてきた脂をすくいとって、布濃しすると、白い出し汁の出来上がりとなります。


ホワイトシチューなどのベースとして

この白い出し汁は、ホワイトシチューなどのベースとして、活用できます。

他にもイロイロな料理に活用できるかと、思います。 さらに次の茶色い出し汁作りの際にも活用しますよ。


牛テール

茶色い出し汁

さて次は茶色い出し汁作りに取り掛かります。 茶色い出し汁は、始めに肉と野菜を炒めてから煮るので、出来上がりが茶色くなるわけです。

まずは仔牛の肩肉(赤身)を2.5kgと、仔牛のスネ肉を2.5kg(骨付き)用意します。 どちらも白い出し汁作りの時と同じ肉なのですが、若干分量が増えています。

さらに仔牛の骨を1kg程用意して、細かく切っておきます。

※今回オイは、仔牛の骨のかわりに、牛テールを代用しました。


豚足

さらに豚の皮を湯通ししたものを300g、豚のモモ肉でつくったハムを250g程用意するのですが、今回手に入らなかったので、豚足で代用することにしました。

炒める

これらの肉を、バター50gか、ラードで焦げ目がつくまで炒めるわけですが、その際、人参とタマネギ各300gも輪切りにして一緒に炒めておきます。


煮る

炒めた材料を、白い出し汁とは別の鍋に入れて、準備しておいた白い出し汁を500ccほど注ぎ、強火で煮ます。


エキス

煮ているうちに、みるみる汁が煮詰まってきて、肉と野菜の持つ美味しいエキスがなべ底に落ちてきて、ほとんど水分がなくなってしまうぐらいになります。

※焦げ付かせないように注意してください。


スープの量4リットル

そこでさらに、白い出し汁を500gぐらい注ぎいれます。 そして、同じように煮詰めるわけです。 こうしてできた、鍋底のドロリとした汁が、ソースを美味しくする素となるわけです。

最後に残りの6リットルの白い出し汁を全部注ぎいれて、煮立たせ、を少々入れて、コトコト8時間煮ます。 最後に浮かぶ脂をすくいとって、布漉しすると、茶色い出し汁の出来上がりとなります。

※8時間も煮込むわけですから、出来上がりの茶色いスープの量は4リットルほどになってしまいます。


ルー、バター

ルー作り

さて。 次はルーを作りたいと思います。 まずはフライパンに、バターを入れて、火にかけます。


バター

始めはバターが泡だっているのですが、しばらくすると、その泡がおさまってきます。


小麦粉

そこへ小麦粉を入れて、炒めていきます。 弱火でお願いします。


炒める

はじめは、なんだかおからのような感じに小麦粉がダマになってしまい、あわててしまいますが、気にせずそのまま混ぜながら、焦がさないように炒めます。 粉を充分に炒めることが、美味しいルー作りのポイントとなります。


ルー完成

最後にはベタリとした茶色いルーができあがります。 今回、300gのルーを使用します。

※バターと小麦粉のバランスですが、あまりバターが少なすぎると、いつまでたっても小麦粉がまとまりません。 ですので、炒めながら、 少しづつ、バターもしくはラードを足していきながら、作ったほうがよいのか?と思われます。


ルー投入

できあがったルーを、茶色い出し汁4リットルの中に投入し、強火で煮立たせます。 そしてしばらくしてから、火を弱めます。


ミルポワ

ミルポワ

人参125g、タマネギ75g、豚の胸肉の塩漬け75g。 これをサイの目切りにして、バターでいためます。 この際、タイムと月桂樹をほうり込んでおきます。

充分炒めたら、各材料は、鍋の中にいれて、鍋に残る油は捨てます。 そしてその空の鍋に、白ワイン を100ccほど入れて、鍋底にこびりついたタマネギや人参の美味しいエキスを溶かし込むようなつもりでこそぎ取り、鍋に入れます。


アク取り

ミルポワを入れた茶色い出し汁を、コトコト2時間煮ていきます。 アクが浮かんでくるので、丁寧に取り除きます。


煮る

2時間たったら、シノワを使って、野菜のカケラを濾して、再び鍋に戻し、800cc程の茶色い出し汁を足して、さらに2時間煮ていきます。


混ぜる

もう一度、シノワで濾してから、瀬戸物の器にあけかえて、冷めるまで木杓子でよくかき回します。 こうすることで、ソースがなめらかになるわけです。


完成

その後ソースは冷蔵庫で一晩寝かせた後、トマトピューレ500ccほど足してよくかき混ぜて、さらに1時間程度煮て、アクを取り、布で濾します。 ソース・エスパニョル、堂々完成であります。 ちなみにこの作り方は、昔からすると、まだまだ簡単な方なのだそうです。


クズ肉

ソースエスパニョル作りでは、各工程で、大量の肉を使います。 ダシをとった後のクズ肉も充分美味しいものなので、 カレーの具にしたり、檀流牛スネスープのようにデンブを作ったり、牛の尻尾シチューのように甘辛く煮たりすると良いと思います。


余談

上記のような方法で、ソースを作っていては、お店なんかやっていられないということで、茶色い出し汁を作る際には、肉をまったく入れずに、仔牛の骨と野菜だけで作るお店も随分あるのだそうです。

さらに煮るうちに段々と少なくなっていくスープの量を、少しづつ熱湯を入れて補ったりもするのだとか。


簡単に西洋風のスープを作るには

ソースエスパニョル、いかがでしたか。 「うん、おいしそう。 でもこんなに手間ひまかけらんないよワシ。」という方のために、簡単な西洋風スープの作り方を記しておきます。

  1. 鶏のガラを2kg用意し、細かく叩いておきます。
  2. 牛のスネ肉を300g用意し、コロコロに切っておきます。
  3. ニンジン1本、タマネギ一個、セロリ少々を薄切りにしておきます。
  4. 鍋に材料をすべて入れて、水2リットルを注ぎ、フタをせずに強火にかけます。
  5. 煮あがったら中火にして、アクをすくいます。
  6. 塩を小匙半分投入します。
  7. 水が半分になるまで2時間程度、弱火でコトコト煮ます。
  8. 布濾しすると、できあがり。

※以上スープ1リットルの場合の分量です。


レシピのまとめ

  • 根気と時間が必要です。
  • 今まで作ったどのスープよりも美味しいものができました。
  • カレー粉を入れると、カレーへ。 トマト多めでハヤシライスへ。 ビーフシチューはソース・エスパニョルに具を足すだけでも随分美味しいものができますよ。
  • フランス料理はソース料理と言われているぐらいで、700種に及ぶソースがある。 その中で基本となるものは9種。 中でも重要なのは、5種。 そのひとつが、 ソース・エスパニョル(ブラウンソース)。
  • ソースエスパニョルは様々なソースの母体になることから、ソースの母と呼ばれるほどである。
  • おさらい:白い出し汁を作り、茶色い出し汁を作り、両者を混合して、ソース・エスパニョルを作り出します。

更新日:23/03/06

公開日:06/11/28


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