今私、深く反省しています。 「そら豆の事をちっとも理解していなかったな」と。
これまでそら豆の事をサラダにしたり、ニンニクと炒めたり、醤油漬けにして焼いたり、スープにしたりして喜んでおりましたが、全部間違いでした。
調理しすぎていたんです。 要は本来のそら豆の風味をまったく活かしていなかったんですね。
三年前に出会ったおじさんがおり、当時飲みに誘われたので近くにある仙台の牛タン専門店であるにも関わらず、何故か藁焼きの鰹のタタキがめっぽう旨いお店へ連れていった時の事でした。
まず真っ先にタタキを注文して食べてもらったんです。
「何ですこのタタキは…これまで食べていた鰹とは一体……」というリアクションが返ってくるともちろん想像していました、それほど上質な刺身を出す店なのです。
ところがおじさんは岩のように黙ったままでうつむいています。
ワケを聞けば、10年前まで遠洋漁業の船に乗って世界各地を転々とする生活を送っていたそうで、その時船上でよく食べていたのが釣り上げたばかりの鰹の刺身で、その刺身の味を知っていたら、世のタタキなんて喰えたもんじゃない、というじゃありませんか。
何でも鰹の身が赤くないそうです。
「それならこの店の話をした時点で言ってよ!」と心中叫びましたが何とも羨ましい話ですね。 ぜひその状態の鰹を食べてみたいです。
つまり私は「鰹の真の味」を知らないという事になります。 以前三重の大王崎を訪ねた折、港に「ケンケン漁」に使われる長い竿が二本後方に突き出た船を見た事がありましたが、アレに乗せてもらい漁についていったら食べる事ができそうですね、どなたかお願いします。
つまり今回、そら豆の真の味を知ってしまったんです。
できれば畑からもぎたてのそら豆が欲しいです、それも分厚いさやに入ったままのそら豆を、です。
近所のお婆さんからこの時期になるとよくそら豆を頂戴する事がありますが、親切心からさやからはおろか、甘皮さえむいてくれて、その豆のみをザルに入れて玄関先に置いてくれたりしています。
ザンネンながら、これでは風味が飛んじゃいます。
なので、せめてこの料理を作る直前にむき出すようにしていただきたいです。 さやから豆を出したら甘皮もチマチマむいていきます。
あらわになった豆本体は、半分に割れてしまうものも出てくるでしょうが気にする必要ございません、要はむきたてのそら豆ならばそれで十分なのです。
浅鍋を弱火にかけて、油をたらします。 今回アヒージョと銘打ちますが、あれほどザブザブ油を使うワケではありません、理由はそのほうが、豆の風味が活きるからです。
油についてもヘンにこだわらずサラダ油を用いるのがベストです。
あとは豆を鍋に入れたらじりじり表裏炒め焼きにして、豆の鮮やかさがグンと増した頃つまみあげて塩をかすかにつけて食べるだけです。
瞬間口中立ち上る春の薫り。 舌の上で溶けるように消えていく豆。 絶妙に熟れたアボカドみたいな豊かな旨味。
この料理に匹敵する美味しさを持つ食べ物を考えてみましたが、ちょっと思いつきません。
19/05/02