気がむいたら、県内で Go To してくつろいでおります。
例年なら今の時期は東京日本橋界隈を散策しているのですが、この状況では致し方ありません。
それにしても灯台下暗し、身の周りは興味深い事であふれているのに今さら気づかされている次第です。
先日縁あって、某集落の潜伏キリシタンの方のお宅へお邪魔しました。
うっそうとした森の中にポツンと佇むその一軒は、文化財に登録されていてもよさそうな、とても古いけど手入の行き届いた小さな家で、中に入れてもらうとまるで自分が巨人になったと錯覚するほど全ての造りが可愛らしいものでした。
老夫婦が住んでいます。
「あんた、アタマ気ぃ付けなさいよ」
鴨居が私の鼻の所にあります。 くぐり抜けて座敷に落ちつき、お茶をススりながら色んな話を聞かせていただいたり古い写真や品々を見せてもらったりと時間の経つもの忘れて熱心に歴史を吸収させて、いただきました。
日が落ちて涼風が吹きぬけてきた頃、おかあさんは土間に下りて夕飯の準備を始めました。 勉強の為拝見させてもらった所なんというのでしょうか、教科書には載っていない極めて合理的でいて愛情にあふれる、ぬたの作り方に遭遇してしまったのでした。
とっさに私はトートバッグの中からマルマンのスケッチブックとLAMYの万年筆を取り出し、その光景をメモし始めたのです。
以下おかあさんになったつもりでご説明いたします。
ホラ、あんた、呑むでしょうがウチんと(おとうさんの事)は。 だけんが何品か酒ん肴ば毎日作るごとしとるとよ。
最近雨ん多かったでしょうが。 だけんが良か魚ば最近持って来ンとやもんね魚屋が(移動式日用品販売車)。
そいやけん、今日はネギとワカメば使うてぬたすっごとしたとよ。
「あんたそがんじーって眺めンでくれんね、ハズカシカたいね!」
別にどこも変わった作り方はなかと。
長ネギば一寸に切るやろ、そいて鍋に移して水ば入れたら火にかくっとさ。 何て? 水から茹ずっとかて? どうしてまた、そんほうが早う煮えるやろが。
そしてワカメば食べよかごと切ってザルに入れとってさ、ネギば茹でた湯ばザッと上からかくっとさ。 そしたらワカメにも火の入るやろが。
ワカメは煮すぎたら美味しゅーなかけん、こんくらい火ば入れるとが良かと。 お湯もムダにならんやろが。
ワカメの汁気ば切ってから、まだ温っかうちに酢ばたらして置いとくと。 今ン暑かけん、食べる前まで冷蔵庫で冷やしとったら良か。
※こちらもぜひ:生わかめの美味しいなます
麦味噌でなくて白味噌のあるやろが。 あそこン寿司屋の味噌汁は美味しかとやもんね、なんでこがんアンタん所の汁は旨かとねて訊けば白味噌ば使うとるって言うとやもん、それからワタシも白味噌で料理すっごとなったとさ。
「なんてね、あん寿司屋は潰れたとね、あいやー……」
味噌ば鍋に入れてさ、砂糖ば合わせたら弱火にかけて練っとさ。 そしたらすぐ味噌の緩んで砂糖の溶けてのうなるやろが、簡単かろがこの練り味噌は。 ホレ、舐めて見んね…美味しかろうが。
アンタもう向こうに座っとかんね、もう出来っけんが。 なんてね、最後まで見るてね! そしたらそこの戸棚から丼ば取ってくれんね、そしてネギば入れとってくれんね。
ワカメの冷とうなっとる頃かて思います。
そしたらワカメば絞ってネギと合わすっとさね。 ばってん、あんまい強う酢ば絞りすぎたら味ンおかしゅーなっけんが、ある程度汁気の残るごとすっとが要領たいね。
なんてね、こいがコツかてね、そがん冗談のごつ当たり前の事たい!
あん人は飲むやろが。 だけんここに辛子ばちっと入れてから、甘味噌であえればハイこれがぬた。
ウチん母の時代から我が家ではずっとこがんしてぬたば作ってきたとよ。
ばってん、当時は白味噌のなかったけん麦味噌でしよったとけどね。 今んとば母に見られたら何ば使うて作りよるとかー、って竹刀でブッ叩かれるかもしれんね(笑)。
ぷちぐる内ではこれまで散々ぬたを作ってきましたが、お世辞でなく最高に美味しい別格のぬたでした。 ぜひ動画の通りに作ってみてください。
20/07/19