たまに行く寿司屋のいけすに伊勢海老がうずくまっていて、息子がそれを見るたびに「あのザリガニデカいなー」と驚いています。
「あれは伊勢海老という海に住んでいるエビで、美味いけど高いんだぞ、ザリガニを釣るような簡単な話じゃないんだよ」と教えると「食ってみてぇー」と心底欲求してきます。
だからそう簡単に食えるもんじゃ…とにごしてばかりも勉強になりませんのでここはひとつ、伊勢海老を食ってみようじゃねーか!
ということでイセエビを買ってきました。 「どうせ高いんでしょ、いーさいーさもうどうでも」と半ばヤケになりつつ「せっかくだからデカいやつください。」と魚屋さんに注文し、 その店で一番デカい伊勢海老を無理して買ってきました。
全長42センチ、1.3キロの巨大な伊勢海老です。 友人の話だと「防波堤付近のテトラポットに夜釣りにいけば、ワンサカ釣れることもある。」といいますが、どうせくれたりしないだろうがオマエは。
伊勢海老を刺身で食うならば、ぜひとも生きているものを使うべきです。 鮮度が命だと思います。 魚屋さんの話だと、伊勢海老は縁起物なので、角が少し折れていたり、足が一本なかったりすると大幅に値段が下がるそうです。 なのでそういうキズものを選ぶのが賢い買い方かもしれません。
さて早速伊勢海老を活作りにしたいと思います。 伊勢海老は生きていてもそっとしておくとおとなしいのですが、手でつかんだり、突っついたりすると「ギーギー」と2本の角周辺から音を出しながら 暴れます。 サイズを計測中に突如暴れだし、ノソノソと歩き始めたときには我が家の嫁、子ともパニック状態になりました。
ですから相当の覚悟をもって、包丁を握ってください。 生きているのに包丁を入れるなんてかわいそう…なんてオセンチはやめるべきである、と檀一雄氏も言っておりますし、美味しく食べてあげれば いいのです。
伊勢海老の抵抗にあいながらも片手でいせえびの頭をつかみ、腹側を上に向けます。 頭と尻尾の付け根に包丁をすばやく入れ、すかさず今度は背側にも同じように包丁を入れます。 腹側に包丁を入れる際にはモタモタしているとその強烈な、尻尾によるビンタを食らう恐れがあります。 結果手元が狂ったらケガにもつながりますので、是非迅速に作業をしてください。
※頭を持つ際にはフキンを間にはさめば痛くありません。
包丁を入れた後、頭をおさえつつ尻尾をねじれば簡単に頭と分けることができます。
無事分けることができたら、ウチワエビの時のように腹側を上に向けて、両脇のふちに包丁を入れて切り離します。
このように腹側のうすい殻が取れるハズです。
あとは背側の殻から身を引き剥がすだけですが、その際に爪をたててはがす方法や、スプーンを用いる方法がありますが、要は残り残らず殻から身を取り外せばよいわけです。
無事身を取り出すことができました。 これまでの人生でこれほどまとまった量の伊勢海老の身を見たことがなかったためにここでひとつ叫び声を上げました。
取り出した身を食べやすい大きさに切って、器に盛り付けて食べるのですが、取り出した身を氷水に浸し、身をしめてから食す、という方法もあります。 オイはむきたてをそのまま食べるのが好きです。
ページトップの写真のように、身だけを器に盛り付けて食べるのもよいですが、せっかくなので、殻にも活躍してもらいます。 尻尾の殻を器に見立ててそこへ身を盛り、イセエビの頭と 合体させます。 皿からあふれんばかりに盛れば見栄えもしますし楽しいです。
普通に醤油で食べてもよいですし、ポン酢もイケます。 おろしたてなのでヒゲがかすかに動く様はまさに活き造りです。
伊勢海老の活造りを美味しく食べ終わった後にもまだ楽しみはあります。 イセエビの頭を味噌汁にするのです!
頭を縦半分に割ると、中からミソがでてきます。 これがまた生で食っても酒肴になるのですが、味噌汁の具としても最高なのです。 大事にのけておきましょう。
※ イセエビのミソを塩辛にするというテもあります。 ミソの重さの3%の塩を振り、冷蔵庫で三日ほど寝かすのです。 塩辛のワタと同じです。
割ったイセエビの頭を酒と水でしばらく煮てから、味噌を溶きます。 今回大きな伊勢海老を購入してよかったことは、濃厚なダシがとれたことです。 磯の風味が豊かなとてもいいダシがとれました。
汁は美味しいし、頭の中や足には身がいっぱい詰まっているしで、大満足でした。 これだけ楽しめれば決して高い買い物ではありませんよ。
08/05/24