その昔、祖母の得意料理の一つに湯豆腐がありました。 ちょうど写真のような配置で豆腐を煮て、少し甘味のあるタレで食べたものでした。 今回作る湯豆腐は、北大路魯山人先生によるもので、魯山人味道を参考にさせていただきながら作ってみます。
美味い湯豆腐を食べるならば、上等の豆腐を選ぶことが第一だと魯山人先生はおっしゃいます。 いかに薬味、醤油を厳選したところで、肝心な豆腐が悪ければ問題にならなそうです。 ここは ひとつきばっていつもよりも少し高めの豆腐を買ってきましょう。
使用する鍋は土鍋が一番よいそうですが、なければ銀なべ、鉄なべでもよいそうです。 こんろや火鉢にかけます。
湯豆腐を食べるときに使う箸は、塗箸や象牙箸のようなものでは豆腐をつまみあげることができないので、杉箸にかぎるそうです。 すべらないので、豆腐がひきあげやすいわけです。
杉箸と一緒に網匙があれば十分だそうです。
水をたっぷり入れた土鍋にだし昆布を2枚ほど敷いて、その上から豆腐を入れて煮ます。 鍋が煮立った際に、昆布が持ち上げられる恐れがあるので、あらかじめ昆布に切れ目 をいれておきます。
「煮る」と書きましたが豆腐が熱湯に浸かっている、ぐらいの温度が最適です。 沸騰させずにフツフツ煮ます。 あまりにも豆腐を小さく切りすぎると、熱が入りすぎてしまいます。
湯豆腐を食べる際に使用する薬味としては、ネギのみじん切り、ふきのとう、うど、ひねしょうがをおろしたもの、七味、ミョウガの花、ユズの皮、山椒の粉など多種多様な薬味があったほうが風情があって よいそうです。 この中でも必須なのはネギで、その他のものは都合と好みでどうでもよいそうです。
よくきれるかんなで薄く削ったかつおぶしを適量用意します。 食べる前に削るのが味、香りともよいです。 鰹節削り器→
上等にこしたことはないです。 豆腐を醤油につける前に、カツオブシその他薬味を入れておいてよいそうです。 化学調味料は加えないほうがよいと魯山人先生はおっしゃいます。
豆腐を長く煮ていると、無数の小さな穴があいてきます。 この状態のことを「す」がたついいます。
すがたってしまうと、滑らかな舌触りがなくなってしまいます。 豆腐には90%もの水分が含まれており、加熱すると表面から水分が蒸発してきます。
同時に豆腐内部の隙間のたんぱく質が固くなり、その後に小さな穴が残されます。 これが「す」です。
「す」をおさえるには塩が効果的です。 又、湯どうふの際にしく昆布にも塩分が含まれているので同様の効果があります。
又煮汁に重曹を少し入れておくと、煮ていくうち豆腐が固くなるのを防止できます。 さらに澱粉を微量入れると豆腐の肌が滑らかに仕上がります。
07/08/25