しばらく長崎を離れておりまして、ようやく帰郷しまず向かうのは、なじみの酒場です。
看板に「オススメ」と書かれて一押しされていたのは鯨の盛り合わせで、文字を見た瞬間「まずはコレだな!」と早くも鼓動が高まったのでした。
席につくなり燗酒と「では鯨の盛り合わせで!」とお願いしたまでは良かったのですが、その注文を聞いた店員さんは微妙に顔を暗め「ちょっと厨房に確認してきますので!」と消えたのでした。
大体このパターンでは「今日の分売り切れちゃいました!」と戻ってくるのがフツーであり、ほら店員さんは戻ってきてそう云うのかというと意外な回答が。
「すんませーん、鯨がですね、赤身だけ残っとるとですけどどがんします?」
赤身だけ。 クジラの盛り合わせに舌鼓、のはずが赤身だけとはなんとまあ・・・でももう引き下がれますか、注文しましょう。
間髪置かず、繰り出されたのがこの赤身でして、鮮やかな赤がまた魚とも獣ともつかぬルビー色をしていて旨そうです。
一口つまめば「赤身といえばマグロ」と勝手に脳が思い込んでいるんですね、まずマグロのそれとの食感の違いにたじろぎ又、すぐに「これは鯨だ鯨」と脳は不満げに正気へ戻るのでした。
おろしショウガを大量に使い、長崎の甘いというにも程がある醤油でつまめば肴になります。
というように、たらふく飲んで帰ってきました所、なにか釈然としないんです。 鯨の赤身には当然、赤身というだけあって脂がありません。
それがあの艶のない口当たりにつながっているワケで、赤身はもっと美味しく食べられても良いと感じたのです。
あんだけ赤々しているにも関わらず、味はめっぽうタンパクなのが鯨の赤身さんです。 そこでマグロのヅケと同じ手法で薄切りした赤身を漬けてみたのでした。
漬ける事半時間。 引き上げて汁気を切り皿に並べます。 上からおろし生姜とネギを散らしてつまんでみたところこれは・・・。
鯨の赤身はこうやって食べるのが正しい! と断言したくなる出来栄えです。 口当たりも醤油で滑らかになりホイホイつまめます。
と赤身の件はこれで終わりまして、鯨ってなんですかね、一度つまんだら鯨熱が起きちゃいます。 となれば魚屋に買いに走りますけど仲良くなっておくものですね店主とは。
「これから鯨買いに行きますから」と伝えたら「切り落としが超得よ!」と店に並ばないものを用意してくれましてこれがその畝須です。
なんとサエズリの切り落としも。
「ベーコンも持ってく?」 もちろん!
そしてこの部位何でしたっけ? 結構高かったんですが、こんだけお得な鯨を頂いちゃったら高い部分も買わなきゃならんワケですね、いつもながら、商売上手な店主ですまったく。
ではまたお会いしましょう!
鯨の赤身を食べて火がついた鯨熱。
15/10/02