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野菜と肉味噌

野菜と肉味噌

四月、毎年恒例の東京出張に向かった折、知人に酒場を案内されました。

めぼしいお店はもう全て探索済だと思っていた所、まだまだ名店がありますね江戸には。

なんでも母体は酒の卸しをやっている会社が運営している店だそうで、酒の銘柄は良し、盛りも豪快、肴も鮮度抜群というようにまさに天国みたいな空間でした。

あれこれ注文した肴の中に、肉味噌がありましてね。

それが今回のレシピを作るキッカケとなりました。

その肉味噌は、大盛りの春キャベツと一緒になって出てきました。

よく知る姿とは異なり、まるで「でんぶ」のように細やかな仕上がりをしています。

一口つまめば思ったよりもアッサリしており、どこかしら親しみのある調味料が使われている事を感じます。

そして飲みながら「はて何だろう?」と思いを巡らすのがいつもお気に入りのひと時なのですが、喉元まで出かかっているような、その用いられている食材が、なかなか出てきてくれません。

一緒の知人に聞いてみようかとも考えましたが、自分の頭から絞り出す事こそが尊いのであり鍛錬になるのでありますからそれはできません。

「杯を重ねるうち浮かぶでしょ」と思っていたのですがついに、店を出てもそれが一体何なのかを突き止める事ができなかったのです。

日は変わって。

ひとりで散策をし、暗くなってきたのでそろそろと割烹店に入りました。

そして蒸し穴子を注文して燗酒をしんみり楽しんでいたのですが、その穴子にたらされている黒々としたツメ、これがまた絶品でして。

お店自慢のまさに秘伝のたれの一種なのだろうなとそのツメだけを舐め舐め呑んでいたのです。

瞬間、このツメの中にある調味料が入っている事に気づきました。

それはもろみです。 かすかに味噌の薫りがするのです。 醤油と酒、みりんだけでは醸すことのできない重厚さがあるのです。

「これだ」

頭の中を電流が走りました。 さる肉味噌に使われていた食材、それはもろみに違いなかったのです。


肉味噌の作り方

まさにパズルのピースがピタリと合わさる、そんな感じがしましたね。 料理はこの瞬間こそが楽しいんです。

このツメの味をどうやって肉味噌に活かすのか、しばし考えた後結論が出て試作をしてみた所、完璧です。 おそらくお店の肉味噌も、今回と同じ工程で作られているハズです、再現度でいえばそうですね、ほぼ百です。

さて。

今回のレシピは一粒で二度美味しいものとなります。 まずは穴子のタレをこしらえて、それを活用して肉味噌を作ってしまおうという魂胆です。

「穴子のタレ」と言ってますが今回の例で分かるように、色んな食材に活かせます。 ブリの照り焼きの仕上げに塗っても良いですし、焼き鳥のタレにもピッタリです、ぜひ常備ください。

そうしましたらまずは鍋にもろみ、みりん、醤油を入れて火にかけます。 沸いたら火力を落として、じっくり煮詰めてまいります。

やがて煮汁はトロミを帯びてくるでしょう。 そこでザルにあけてモロミを濾すと、これぞ秘伝系穴子ダレの完成です。

できれば一晩置いて使うと味がなじみます。 そして濾したモロミはモロミでかなり美味しくなっていますので、きゅうりでも添えて余さずいだたいちゃってください。

続いて肉味噌にまいります。 鍋に鶏のひき肉を入れて弱火にかけます。 しばらくすると肉から水気が出てきますので、混ぜながら炒ってまいります。 弱火でやるから油要らずなんです。

肉の赤身が消えて完全に炒りあがったら、あたり鉢に移します。 そして丹念にあたりキメを細かくするんです。

この細かさも、今回の肉味噌の大きなポイントになりますので入念に。

あたかもデンブ状になった所で穴子ダレをたらしてよく混ぜ合わせます。

これぞ、あの時味わった肉味噌です。 好みにもよりますが、混ぜる際ごま油を少々たらしておくのもイケますよ。

あとはお好みの野菜をたっぷり用意して、肉味噌を乗せてはカブりつくだけ。

ぜひ、この感動をあなたにも!


レシピのツボ

  • ご飯に乗せる用の肉味噌にする場合は、タレの量を半分にして混ぜ合わせます。
  • 賑わっている店は大いにそうで、そうでない店はまたそうなのですな。

22/05/10



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