ついに我が家の第六代、レグザに着けてる外付HDDが壊れました。 最近では馴れたもので、前兆をいち早く察知し、即新設したものにデータの引っ越しを行います。 異音&再生がギクシャクしてくるんですよね。
引っ越しには結構な時間が必要で、合間を見て気長に行いましたが、昔取った番組で観てないものも結構ありまして。
その中のひとつに、プレミアムアーカイブス ハイビジョン特集「“津軽”生誕百年 太宰治と故郷」がありました。
興味深く拝見していたところ卵味噌に行き当ったというわけです。
要は以前にこしらえた貝焼きであります。 ホタテの貝殻に削った鰹節を入れて、
味噌を溶きます。
そこへ溶き卵を流し入れ、程よい半熟程度になったところでいただきます。
元々は病人食で、お粥に卵味噌をかけて食べたそうです。
とまあなんとも簡単に卵味噌は完成しましたが、そりゃ旨いですよねこれは。 以下放映中卵味噌に関する部分を抜き出しましたので記します。
Sさんのお家へ行って、その津軽人の本性を暴露した熱狂的な接待振りには、同じ津軽人の私でさえ少しめんくらった。 Sさんは、お家へはいるなり、たてつづけに奥さんに用事を言いつけるのである。
おい、東京のお客さんを連れて来たぞ。 とうとう連れて来たぞ。 これが、そのれいの太宰って人なんだ。 挨拶をせんかい。
早く出て来て拝んだらよかろう。 ついでに、酒だ。 いや、酒はもう飲んじゃったんだ。 リンゴ酒を持って来い。 なんだ、一升しか無いのか。 少い! もう二升買って来い。
待て。 その縁側にかけてある干鱈をむしって、待て、それは金槌でたたいてやわらかくしてから、むしらなくちゃ駄目なものなんだ。
待て、そんな手つきじゃいけない、僕がやる。 干鱈をたたくには、こんな工合に、こんな工合いに、あ、痛え、まあ、こんな工合いだ。 おい、醤油を持って来い。
待て、坊やを連れて来い。 小説家になれるかどうか、太宰に見てもらうんだ。 どうです、この頭の形は、こんなのを、鉢がひらいているというんでしょう。 あなたの頭の形に似ていると思うんですがね。 しめたものです。
おい、坊やをあっちへ連れて行け。 うるさくてかなわない。お客さんの前に、こんな汚い子を連れて来るなんて、失敬じゃないか。 成金趣味だぞ。
音楽、音楽。 レコードをはじめろ。 シューベルト、ショパン、バッハ、なんでもいい。 音楽を始めろ。
待て、なんだ、それは、バッハか。 やめろ。 うるさくてかなわん。 話も何も出来やしない。 もっと静かなレコードを掛けろ、
待て、食うものが無くなった。 アンコーのフライを作れ。
待て、アンコーのフライとそれから、
卵味噌のカヤキを差し上げろ。 これは津軽で無ければ食えないものだ。 そうだ、卵味噌だ。 卵味噌に限る。 卵味噌だ。 卵味噌だ。
津軽人の愚直可憐、見るべしである。
そうして、ついには、卵味噌、卵味噌と連呼するに到ったのであるが、 この卵味噌のカヤキなるものに就いては、一般の読者には少しく説明が要るように思われる。
私の幼少の頃には、津軽に於いては、肉を煮るのに、帆立貝の大きい貝殻を用いていた。
卵味噌のカヤキというのは、その貝の鍋を使い、味噌に鰹節をけずって入れて煮て、それに鶏卵を落として食べる原始的な料理であるが、実はこれは病人の食べるものなのである。
病気になって食がすすまなくなった時、このカヤキの卵味噌をお粥に載せて食べるのである。
読者もここに注目をしていただきたい。 その日のSさんの接待こそ、津軽人の愛情の表現なのである。
以上 プレミアムアーカイブス ハイビジョン特集「“津軽”生誕百年 太宰治と故郷」より
ちなみに青空文庫で『津軽』は読めます。 青空文庫 津軽
卵味噌をお粥にかけて食べるのだった。
Instagramはじめました! ぜひフォローお願い致します。
14/05/19