先日読んだ、團 伊玖磨の『パイプのけむり』に、タルタルステーキの話がありました。
團さんが初めてタルタルステーキを食べたのは、ドイツのレストランでした。 詳しい話は省きますが、 蒙古人の野戦料理が韃靼風ステーク、すなわちステーク・タルタールになったとあります。
用いる肉は牛ではなく馬刺し用の馬肉です。
馬肉を包丁で丹念に叩いて挽き肉状に仕上げます。 話だけ聞くと大変そうですが、馬肉は案外柔らかです。
本式には包丁の背中で何時間も肉を叩いて作るらしいです。
あとは叩いた肉をハンバーグのようにまとめて皿に盛り付けまして、 中心を少しへこませてそこへ卵黄を落とすだけ。
卵と肉をよく混ぜ合わせながら薬味や塩、胡椒で好みの味に仕上げ、薄切りパン等に載せて食べます。
薬味はパセリ、タマネギ、ニンニクのみじん切り、 アンチョビ、ケイパー、黒胡椒、パプリカ等で、 味付けは塩や洋酢、バター、サラダオイル等お好みでどうぞ。
ちなみに我が家はつまんでいるうちに色々と試してみたくなり、 ラー油をたらしてみたり、マヨネーズであえてつまんだり・・・そうそう、叩いた馬肉って梅肉と似ているんです。 そこで両者を和えて炙りたての海苔ではさんでつまんでみたところこれがまた旨いったらありゃしませんでした。
最後に『パイプのけむり』から、一部引用しておきます。
見ると、皿の上には、丁度ハンバーグ・ステークをフライング・パンに入れる前の生の状態に似た真赤な円い挽き肉風の塊が置かれ、 その真赤な挽き肉風の塊の中央を少し凹ませて、そこにこれも生の鶏卵の黄身が載せてある。
その皿を囲んで、種々の薬味を載せた皿や、味付けの瓶、食塩入れや胡椒のミルが賑やかに並んでいる。
ヨーロッパではモンゴル人をタタール人と呼びました。 ギリシア神話で地獄を表すタルタロスのイメージにちなんでタルタルと呼んだそうです。
強大な勢力を持っていたモンゴル帝国のタルタルステーキはロシアからやがてドイツ北部の港町、ハンブルグに伝えられると、鉄板で焼くハンバーグ・ステーキへと変化しました。
更新日:23/02/08
公開日:11/11/25