「おにぎりなんて塩つけてニギニギしてほれっ」
とだれでも簡単にできてしまうものですが、ちょっとしたコツであなたのおにぎりはグッとよくなります。
食欲旺盛な我が家の子供たちは、ごくたまに飯の食い込み方が悪くなります。
体調不良とかそういう理由ではなく、気分的に口にしたくないだけなのかもしれませんが、そういうときに効果的なのが「おにぎりにする」なのです。
茶碗についだご飯をおにぎりにしてあげると、なぜだか全部食べてしまいます。 ちなみに息子は「まん丸おにぎり海苔増し全部巻き」が好きで、 娘は上の写真のような、普通の三角おにぎりが好みです。
息子の場合、おにぎりが娘仕様のものでも何の問題もなく食べてくれますが、娘は普通の三角おにぎり以外は口にしないという強力な意思をもっています。 困ったものです。 海苔を巻く位置まで決定されています。 海苔が余ったのでおにぎりの横っちょにペタッとか貼り付けたら怒ります。 困ったものです。
※ちなみにまん丸おにぎり海苔増し全部巻きとは、おにぎりを大きく球体にこしらえ、その全体を海苔で隙間なく包みこんだものです。 オイがふざけて作ったのがはじまりで、我が家ではこれを「砲丸」と呼びます。
昔、酔っぱらった親父がよくおみやげに買ってきてくれたのが、おにぎり専門店の三角お握りでした。
おにぎりの頭から具がはみ出ていてビックリ、かじってみてあまりの美味しさにまたびっくり、大好きでした。
それでは家庭のおにぎりと、プロが作るおにぎりは一体何が違うのでしょうか? 答えは「握り方」にあります。
「おにぎりは握るものではない」
とプロは言います。 禅問答のような話ですが、本当のことなのです。
おにぎりの味は、握り方によって変わるのです。
では早速上手なおにぎりの作り方を申し上げます。
「表面を固めに、中身はフワッとなるように、にぎる」
これが美味しいおにぎりを作る極意です。
ご飯粒をつぶさずに、米を立たせて適度な空間を作るのがポイントなのです。
と、このように簡単に言われましても、なかなかそうマネできることではありません。 飲んだ帰りにおにぎり専門店に寄り、その握る様子を見ましても、 常人ではマネできないような手つき、早業で握り上げています。 その仕草だけ真似てみても、ボロボロのおにぎりが出来上がるだけでしょう。
※その場ですぐ食べるおにぎりはフンワリでも良いのですが、持ち運ぶ時はギュッと握ります。 そう、あたかも米の間の空気を抜くように。
我々素人がおにぎりを上手に握るためには、次の点に注意します。
それでは早速オニギリを作りましょう。 とその前に、やっておくべきことがあります。 食塩水を作るのです。
塩1に対して水2の割合(塩70gと水200mlを合わせて混ぜるのがオススメ)で塩水をこしらえます。 かなり濃い塩水ですから塩が水に溶け込むまで少し時間がかかりますけどここが大事です。 グルグルとかき混ぜながら、塩を水に溶け込ませます。
あとは塩水で手を濡らし、アツアツのご飯をとり、手早く握るだけです。 おにぎり一個の飯量は、自分の手の中に納まる分量が理想です。
普段オニギリを作る際にはまず水で手を濡らし、ご飯をとり、ある程度握ったところで塩をまぶし、また握る、という風に「二度握り」をやると思います。 これが握りすぎにつながるわけです。
塩水を用いることで、あとで塩をまぶす手間が省ける上、握りすぎることも防止できるのです。 すばらしい!
※塩と水の割合は実際作ってみてから好みに調整すればよいです。 あまりにもベチャベチャ濡れた手で握ると塩辛くもなり、飯粒がベタってしまうので加減してください。
オニギリの中に梅干とかツナマヨ、鮭、塩昆布、その他諸々を忍び込ませたい場合がありますよね。 具をつまむ際は指ではなく、箸を使う心遣いがおむすびには必要です。
無造作に指でつまんで具を配置し、その手で握ってしまうと、おにぎりの白い肌を具の汁で汚してしまうことになりますから。
以下キリコブ佃煮、ハトウガラシ、梅オカカ・・・と続きますけど、上位3種が圧倒しているそうです。 よくわかります。 ちなみにコンビーフとおむすびはよく合うそうです。 (嵐山光三郎著:素人庖丁記より)
「そもそも不器用だし、オニギリをきれいに形作るのはムリ」という方は、あたたかいご飯を一旦椀にとり、ゆるゆる揺さぶってある程度形を整えてから握りこむとよいです。 飯の熱さも回避できるハズです。
よくあるおにぎりの型を使うのはおすすめしません。 見た目的に面白くないし、微妙な握り加減が調整できない上、愛情がこもりきらない気がしてなりません。
おむすびは、むすぶのです。
むすびとは神産(かみむす)びからきた言葉で、人間が手の中に米飯を持って、それを心をこめて結ぶものなのである。
したがって、むすびの中には霊魂が入り、むすびの中で人と神がむすばれるのであります。
と、素人庖丁記にありました。 型にはまりきってしまうのはよくありません。
それでは皆様豊かなおにぎり生活を! 最後に東海林さだおの「タヌキの丸かじり」内「塩むすびの」の一部を引用してから終えたいと思います。 尚、おにぎりの握り方については、コックのネタ本を参考にさせていただきました。
塩むすびは全裸、内容物なし。 裸一貫、ゴハンだけで勝負している。 「そんな、ゴハンだけのおにぎりなんて、うまいわけねーだろ」と、いまの若い人は言うかもしれないが、 ぜひ一度試してみることをおすすめする。
塩むすびはどこにも売っていないので、自分で握って食べることをおすすめする。 実にもう簡単で、手のひらに水と塩をつけて握るだけだ。
ただし、握るゴハンはうんと熱くなければならない。 食べるときはすこし冷めてもいいか、握るときは熱くなければならない。
炊きたてのうんと熱ーいゴハンを、手に水と塩をつけて、
「アチー、アチー」と言いつつ、両手を顔の前で上下させつつ、肩も腰も上下させつつ、時には拝むような格好になりつつ、時には踊りながら拝むようなことになりつつ、 握ったのがおいしい。
アチーなし、肩腰の上下なし、拝み踊りなしで黙々と握った塩むすびはおいしくない。
ぼくの小さいころは塩むすびをよく食べた。
どうですか、おむすびを食べたくなってきませんでしたか? もうちょっと引用してみます。
釜の底にはゴハンがこびりついている。
このこびりついたゴハンを、シャモジでこそげ取った母親は、これをひとつのカタマリにし、手に水と塩をつけ、ニッチニッチという音と共におにぎりにしていく。
幼児はエプロンのスソをしっかり握り、左親指を口中にしっかり吸いこませ、期待に満ちた目で下から見上げながら、このニッチニッチという音を聞いている。
なぜこの幼児はこれほどまでに期待に目を輝かせるのか。
この家では、釜からこそげ取ったゴハンで作る塩むすびの権利は、この幼児にあるのだった。 幼児の目が輝くのも当然なのであった。
やがて塩むすびを握り終わった母親は、
「ホレ」
という愛情に満ちあふれた言葉と共に、丸くて小さな塩むすびを幼児に手渡すのであった。
どうですか、誰かにおむすびを作ってもらいたくなりませんでしたか? もうちょっと引用してみます。
塩むすびは丸く平べったく、白いゴハンのところどころに茶色いおコゲがカサブタのようについているのであった。
塩むすび塩は、表面だけについている。 ここのところが塩むすびのおいしさのポイントだ。
最初の一口を食べたとき、強めの塩の味がしてしょっぱいが、すぐその下の味のないゴハンと混ざり合ってちょうどよくなる。
このときの味の時間差がおいしい。 「塩味→ゴハンの味」の「→」のところを味わうのが塩むすびの楽しさなのだ。
どうですか、今すぐイスを立ち、おにぎりを作りたくなってきませんでしたか。
更新日:23/02/06
公開日:08/09/25