今回はサバの中落(骨)とダイコンさえあれば作れてしまうという船場汁(せんばじる)を作ります。 大根と鯖の中落がおりなす滋味あふれる味わいは、化学調味料では到底醸し出せないものであります。 作り方は、ひとり暮らし 料理の技術によるものです。
魚の三枚おろしで、真ん中に残った骨のことを中落といいます。 この中落ちを使って船場汁を作るわけです。 2、3センチ幅にぶつ切りし、血合を丹念に取り除いておきます。 入念にやるならば、聖護院かぶらとネギの炊き合わせのように、アラを熱湯にさっとくぐらせておくとよいです。
シメ鯖を作る際には中落ちが出ますので、汁物として船場汁を作ると無駄がありません。
そもそも船場汁とは大阪の問屋街である船場で生まれた大阪府の郷土料理であり、汁が少ないものは船場煮とも呼ばれます。
塩サバとダイコンを煮こんだ澄まし汁の一種で、塩サバのほかにもブリや鯛、スズキなどを使うこともあるそうです。
もともと、焼いて食べたあとの塩サバの骨を利用したものらしく、問屋街の船場でよく食べられたそうです。 従業員の多い問屋では食費をいかに抑えるかが問題であり、 船場汁はコストがかからず、塩と湯を足すだけでいくらでも増量ができ、なおかつ体が温まることなどから、忙しい問屋街で重宝され、発達、定着したといわれます。
※作家の花登筐さんは大阪の船場ものが得意で、よくこんな話をしたそうです。 「船場ちゅうのはすさまじいところでね、たった一尾の鯖を何人もの丁稚たちに三日間食わせたもんです。」 一日目は鯖の頭を煮てダシをとり、これで味付けした大根の煮物を食べさせる。 二日目は骨だけが入ったすまし汁。 さすがに情けなくて、すするたびに涙が出る船場汁、というのはこれになります。
三日目になってやっと、わずかな切り身が食卓にのります。 むしゃぶりつく丁稚たちに主人は言います。 「わしが食っているのは鯛や。 こないうまい魚はない。 おまえたちも食いたいやろ、口惜しかったら、早う主人になれ」 これが船場式の教育だったそうです。
船場汁の具は大根のみであり、その潔さにホレました。
厚い短冊に切っておきます。
サバの中落と、大根の短冊を水で長時間煮込みます。 この際塩少々を振っておくだけで、余計なことは一切しません。 こんな船場汁の潔さにホレました。
今回2時間ばかりとろ火で煮込んでみましたが、大根が柔らかくなればそれでよいと思います。 途中で汁が減ってきた場合は、その都度足します。
煮込めたら、仕上げに醤油をひとたらし、胡椒少々を振り込んで船場汁の完成です。 アツアツを召し上がれ!
※以上のように、津村式船場汁は非常にシンプルなのですが、塩サバの身、頭を入れたり、昆布だしで煮込んでみたり、薬味としてネギを入れる場合もあるそうです。 生臭み がある場合は、 あらかじめ中落を熱湯にくぐらせて臭みをとってみたり、ショウガ、ユズ等吸い口をいれたり、酢一適落としてみたりするとよいです。
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08/04/08