酒盗とはカツオの塩辛であり、これがあると酒がすすんですすんで・・・という状態に陥るところから名づけられた珍味です。
ぷちぐるではこれまでに酒盗アボカドカマンベール3種和えや、 酒盗団子チーズ風味、旧友再開漬 というように酒盗を楽しんできましたが、今回は、その酒盗そのものを作ってしまおうという計画です。
さてまずは新鮮なカツオを仕入れてきましょう。
カツオ本体は三枚おろしにしたあと、カツオのたたきや 鰹のカルパッチョで食べるとして、重要なのは内蔵です。
三枚おろしにする段階で、丁寧にカツオの内蔵を抜いておきます。
※カツオの皮の下には、寄生虫がいることがあるそうです。 ということは、内蔵にもいるのかもしれません。 酒盗を作るか否かの判断はご自身でなさってください。
取り出した内蔵をきれいに水洗いします。 さてこの内蔵一式、どこを酒盗にすればよいのでしょうか。
冷蔵庫から市販の酒盗を取り出して眺め、食べてみました。 塩気があり、コリコリとした食感がします。 おもわず日本酒に手が伸びそうになりましたがまだ真昼間ですし、 酒盗を食べるのではなくて作るのです今回は。
味はともかく、見た目はピンク色をしていてとても細かく刻んであります。 見ただけではカツオの内蔵の一体どの部分なのかは判別できません。 瓶のラベルには様々な調味料と共に「カツオ」としか書いていないですし。 しかし、これまでの経験から判断すると、たぶん腸じゃなかろうか?という決断をくだしました。
よって市販品はカツオの腸を使っていることにします。 ちなみに今回は、肝臓、胃袋、腸周辺をぜんぶ塩漬けにします。
内蔵を細かく切り、塩をたっぷりと振ります。 ぬめりがとれるまでよくもんで、洗い流し、よく水気を切ってから新たに塩をふり、よくなじませます。
酒盗は塩辛いものなので、塩加減は気にせずにたっぷりふりこみました。
塩をふった内蔵を清潔な容器にいれて、冷蔵庫に保管します。 2、3日朝晩毎日かき混ぜて、熟成を進めてから食べます。 イカの塩辛と同じです。
今回5日間、毎日かき混ぜました。
※容器に入れて、フタをせずに「さらし」などでくるみ、通気を保っておいたほうがより熟成が進むという話もあります。
容器から取り出して、汁気をきり、細かく刻んでからいただきます。 塩辛さ、コリコリとしたこの食感、まぎれもない酒盗ですこれは。
酒を盗まれる前にもう一工夫を。 刻んだ酒盗にレモンをギュッと絞込み、パセリのみじん切りをまぶします。 これでどこにだしてもはずかしくない酒のアテができました。
自家製酒盗がどれだけ酒を盗むのか、今度の活躍が楽しみです。
実は上記のレモン、パセリで食べる手法は草野心平さんによるものです。 名著「酒味酒菜」にありました。
市販の瓶入カツオの塩辛はどうもまずいので、レモン、パセリを加えて酒の肴にするということでした。 レモンのかわりにブランデーや日本酒をたらしこんだり、 味醂をたらしたり、パセリのかわりに柚子の皮のみじん切りを入れたりするそうです。 又、イカの塩辛にも酒、味醂をたらすとコクがでるとあります。
さて、そんな草野さんがカツオの塩辛を作る場合はどうやるのかというと、
となります。 尚、長期保存する場合はワタを切らずにまるごと調味料とあわせて、2、3ヶ月密封するそうです。 この場合、ユズは入れないそうです。
酒場の品書きに「酒盗干し」なる文字を見つけ、即注文したところ出てきたのがこれです。 酒で溶いた酒盗を魚にまぶしてしばし干し、 焼いてレモンを絞って食べます。 無論、イケます酒。
そのまま美味しい酒盗ですがこんな活用法があります。
壱岐や対馬では、カツオの腸と、肝臓等柔らかいワタを用いて酒盗が造られます。 ワタ一升につき塩を二合から二合半合わせてカメに入れ、毎日一度かき混ぜます。 ひと月すると食べられるようになり、正月まで持ちます。
夏の暑さをしのぐためにカメは土の中に埋めておきます。 3,4ヶ月経つと肝臓などのワタは溶けて、腸だけが残ります。
以上、酒盗でした。
08/12/11