只今7月5日です。 来るべき土用の丑の日に備え、櫃まむしの作り方を覚えておきたいと思います。 さらにはウナギの白焼きの美味しい食べ方まで記しておきます。 さあ来い土用の丑の日!
ひつまむしを作り始める前に、そもそも櫃まむしとは一体何なのかを知っておく必要があります。
「うなぎでご飯を食え」といわれてまず真っ先に思い浮かぶのがうな重とウナ丼です。
うな丼は鰻丼であり、広辞苑によりますと、
丼に飯を盛り、その上にウナギの蒲焼をのせ、タレをかけたもの。 うなどん。 まむし。
とあります。 一方うな重のほうは鰻重であり、ウィキペディアによりますと、
木製の四角い箱に漆塗り等の塗りをかけた蓋の付いた食器である重箱の中に御飯を入れ鰻の蒲焼を載せ、 上から蒲焼のタレをかけた日本料理の一つ、又は鰻料理を入れる食器の名称。
いずれも鰻重箱(うなぎじゅうばこ)の略称である。
とあります。 うな重とうな丼の違いは器なんですね。 しかしながらウィキペディアにはさらにこうありました。
用いる食器が丼であれば鰻丼、重箱なら鰻重とする地域もあるが、鰻重とは鰻が重なった状態の「鰻重ね」を意味するとして、 御飯と鰻の蒲焼をサンドイッチ状に何層かに重ねてそう呼ぶ地域や店舗がある。
だとか。 だんだん話がややこしくなってまいりましたが、とにかく蒲焼を乗せたご飯ということで間違いないようです。
さてそれでは早速鰻のひつまむしを作り始めてみたいと思いますが、ヒツマムシって何?。
広辞苑第5版を開いてみましたが、ひつまむしに関する記述はありませんでした。 ちなみに櫃の説明はこうです。
【櫃】
大形の匣(はこ)の類で、上に向かって蓋の開くもの。
特に、飯櫃。 おひつ。
とあります。 櫃に関してはなんだかイメージがつきました。 でも一体まむしってどういうこと? オイが問題にしているのはウナギなんだよ! というイラ立ちを胸に、まむしに関してさらに広辞苑を引くと、 例の毒蛇に関しての記述の次にこうありました。
【まむし:まぶし(塗し)の転か】
鰻飯・鰻丼の京阪地方での称。 鰻は飯の間に入れる。
と、あります。 なるほどそれをまむしと呼ぶんですね。 それでは櫃まむしとは「上に向かって蓋の開くおひつに鰻飯を入れたもの」ということで良いですか?
とつい誰かに問いかけたくなってしまいました。 念のために鰻飯を広辞苑で調べたところ、
【鰻飯】
飯の上に鰻の蒲焼をのせたもの。 まむし。
とあります。 あれ、でもさっき「まむし」を調べたら「鰻は飯の間に入れる」とありましたよね? 間に入れるんかい、上に乗せるんかい、どっちだこのやろう!とかなりムカついてきましたが、 どうやら厳密な定義はないように思えます。
※小泉武夫さんの「食に知恵あり」によると、ウナギめしに関し、関東は蒲焼をめしの上に乗せるのに対して、 関西では「まむし」と称して、蒲焼をめしの表面と中に二重に入れたり、小さく切って飯に混ぜたりするそうです。
さて。 そんなひつまむしですが、ウイキペディアに詳しい記述がありましたので、そちらを参考にさせていただきます。
主に名古屋市近辺で食べられている、ウナギを用いた郷土料理である。 ウナギの蒲焼を細かく刻み、飯に乗せたもの。小ぶりなおひつに入れられた飯を混ぜて食べることから、こう呼ばれる。
また関西で鰻飯を意味する「まむし」という語からひつまむしとも呼ばれており、 名古屋では両方の呼び名が通用する(「まぶし」も散りばめる意味の「まぶす」からではなく、元々この「まむし」の転訛とも考えられる)。
はぁ? 「ひつまむし」は「ひつまぶし」という呼び名もあるわけ? もー、ウナギってふんとにもう曖昧模糊としております。
ちなみにひつまぶしに使用される蒲焼きは、関西風の作り方で蒸さずにそのまま焼き上げられるそうです。 ん?また新たな疑惑が持ち上がりましたね。 では関東風の焼き方って?
手許の小泉武夫「食に知恵あり」によりますと、
関西ではうなぎの白焼きにタレをかけながら付け焼きするのに対し、関東ではそのまま焼いたのでは脂が強く、 皮が固くなるために蒸して脂肪を抜き、柔らかくしてからタレで付け焼きをするそうです。
要は蒸してから焼くのが関東なのです。 へぇー。 ちなみにウナギは関東では細め、関西では太めを選ぶそうで、 その割き方も関東では腹開き、関西では背開きという違いがあります。 一説によると、関東では、切腹を連想させられるので、 背開きをするようになったのだとか。 さらに関東の蒲焼は背びれ、尾びれを取り除き、頭をつけませんが、関西は背びれ、尾びれ、頭をつけたまま焼きます。 そして関東ではウナギを二つに切ってから竹串を打ち、皮のほうから焼きますが、関西では一匹丸ごと金串を打ち、肉のほうから焼きます。 どこまでもメンドクサイやつですウナギって。
※北大路魯山人先生の「魯山人味道」に 「うなぎの焼き方であるが、地方の直焼き、東京の蒸し焼き、これは一も二もなく東京の蒸し焼きがよい」とあります。
※2辻嘉一さんによると、どうして関東、関西で対照的な調理法になったのかというと、関東でとれるウナギは泥臭く、関西のは泥臭くないからとのことです。
では櫃まむしに戻ります。 発祥は明治、名古屋市熱田区の「あつた蓬莱軒」とか中区の「いば昇」と言われているそうです。 一方名古屋でなく大阪、三重という説もあるらしいです。 やっぱりウナギはモヤっとしています。
※「ひつまぶし」はあつた蓬莱軒の登録商標です。
さてようやくひつまぶしの作り方にたどり着きました。 「池波正太郎の食卓」を参考に調理開始です。
ウナギを一匹買ってきて、アナゴのおろし方のように割きます。
アナゴ丼を作ったときのように、頭と骨をよく焼いて、ダシをとります。
頭、中骨を鍋に入れ、水5、酒2、醤油1.5、みりん1.5を合せた煮汁で煮込みます。
ウナギの身を4等分にして、皮を下にして焼き、丸まったら裏返す、という風に焼いておいてから、今度はタレをハケで塗りながらあぶり焼きにします。 2、3回繰り返すと美しい蒲焼ができあがります。 あとは蒲焼を刻んで、ご飯とまぜれば鰻の櫃まむしのできあがり。(ページトップの画像)
という風にカンタンにひつまぶしは作れます。 面倒ならば鰻の蒲焼を買ってきて添付のタレをご飯にかけ、炙りなおした鰻を刻んで混ぜ込めばよいだけの話です。
老舗は代々受け継いだタレを使います。 時々古いものに新しいものを混ぜながら、脈々と受け継ぐんです。
キホンは同割といいまして、みりんと醤油を同量用い、 煮詰めたみりんに瞬間火入れした醤油を合わせます。 この中に焼いた鰻を浸し続けるうち、独特の旨味を持つタレに成長します (うなぎのタレの作り方)。
さて完成したヒツマブシを食べますが、その食べ方がウィキペディアにありましたので、そちらを参考にさせていただきます。
お店などではおひつに入ったひつまぶしを付属の茶碗にとりわけながら食べるそうです。 まずはひつまぶしをしゃもじで十の字に切分けて・・・
とあります。 その例にならって食べてみましたが、オイはやはりそのまま茶碗に盛ったのが一番好きだったので、それをグゥアツグゥアツ食べました。
以上ひつまぶしでした。
さて次は酒飲み必見、ウナギの白焼きです。 ウナギをアナゴのおろし方のように割いて、焼きます。
はいこれで白焼きの完成。 小泉武夫さんにならって、卓上コンロに土鍋をのせ、湯を張り、ふつふつ沸く程度に火加減を調整し、土鍋の蓋を逆さまに装着します。 土鍋の蓋は皿がわりで、下からの湯気で常に熱さを保っているので、その上で白焼きを温めるのです。
わさび醤油や、大根おろし醤油でいただきます。 腹が立つほど美味しいです。
鍋の底に竹皮をしき、その上にウナギの白焼きを並べます。
上から煮汁(水5、酒2、醤油1.5、みりん1.5をあわせたもの)、実山椒を加えてじっくりと煮ます。
柳川の名物にウナギの蒸籠蒸しというものがあります。 それを家でやる場合、どんびりにご飯を盛り、ウナギを乗せて蒸します。
蒸しあがりに近い頃、溶き卵を小鍋に入れて湯煎しながらかき回して炒り卵を作り、 丼の隙間を炒り卵で埋めつくします。
この作り方は森須滋郎著「食卓12ヶ月」にあったものです。 尚、本式の蒸籠蒸しでは、錦糸玉子を用います。
夏の土用の丑の日は「土用鰻」と称し、夏負けせず滋養に効果があるとして、この日に鰻を食べる風習があります。
土用とは、小暑から立秋までの夏の最も暑いさかりで、丑の日とは十二支の丑にあたる日を指します。 土用丑に鰻を食べる由来についてもやはり曖昧で、 平賀源内が発案したとか、毛筆で書いたうしと言う文字がまるで二匹の鰻ように見えたからだとか、土用に大量注文を受けた鰻屋が、 子の日、丑の日、寅の日の3日間で作って土甕に入れて保存しておいたところ、丑の日に作った物だけが悪くなっていなかったからとかあります。
以上のように、うなぎはハッキリしないヤツなのです。 第一、これだけ食べられていてメジャーであるにも関わらず、 ウナギがどこで産卵するのか?どこで生まれるのか?ということさえ半世紀も調査していたにも関わらず謎で、最近ようやく判明したそうですから。
ウナギという名の由来でさえ、以下の通りです。
「旨いのはよく分かる、でもこうね、生きる道を固めよ!」と言ってやりたいんです。
これほどまでにウナギを取り巻く環境がモヤついているのは、ウナギが人を魅了し続けているからです。
以上、昨今のウナギ問題にウンザリしながらこのページを作りました。 いやぁーウナギって、ホントに美味しいものですね、それではまた。
08/07/06