10年ぐらい前になりますかね、和歌山へ行った折美味しいラーメン屋さんを地元の人に聞いたところ、即答していただいたのが「井出商店」でした。
教えられた通りに歩くと、すぐに井出商店の行列が見つかりました。
まだ二郎も家系も知らない頃だったので、舌に絡みついてくるコッテリ豚骨スープにショックを受けたものでした。
もう何年も口にしていませんが、記憶を頼りに、井出商店風を目指して作ります。
麺の記憶があいまいだったので、とりあえず細からず、太からずのストレート麺を打ちました。
今回強力粉600グラムに薄力粉400グラム、 塩10グラムに水430グラムをこね合わせて作りました。 なかなかスープになじむ麺を打てたと思います。
麺を打ってから二日寝かせます。 茹で時間は4分です。
麺の太さはパスタマシンに付属の刃で1.5ミリに決めました。 あらかじめダイヤル5まで生地を延ばして切り分けます。
詳しい麺の打ち方は、パスタマシンで自家製麺をご参考にどうぞ。
和歌山ラーメンといえば豚骨醤油風味なのですが、厳密に言うと醤油の強い屋台系のものと、豚骨が強いものとに分かれます。
今回目指している井出商店は、豚骨系の代表格にあたりまして、ある日店主かうっかり豚骨を煮すぎてしまったことに由来する一杯になります。
ですのでゲンコツを叩き割り、大量に煮出すのが当然なのですが、個人的な感想では、さほど豚骨風味が強かった印象がありません。
なので今回事もあろうにトリガラをメインにスープを作ります。 トリガラの中でも今回用意したのはモモ身の骨で、 肉屋さんでたまたま見つけたものです。
ゲンコツを煮る時のように骨を割り、スープが出やすくしてから煮込みます。
今回のスープを作る上で重要なのが背脂です。 あの独特の麺にまとわりつくスープを作るには不可欠です。
トリガラ3に対して背脂1の割合で一緒に強火で煮込みます。 好みによっては背脂の量を増やしても構いません。
本式にゲンコツを用いて作る場合は、モミジを一緒に煮込めば同じような質感に仕上がると思います。
詳しいスープの抽出法は(ラーメンの作り方)をどうぞ。
10時間ほど強火で煮込むと、油が乳化したトロ-リ濃厚スープになります。
豚バラブロックを小鍋に入れ、そこへ事もあろうに醤油を並々と注ぎ、煮込みます。 いつもはお湯で茹でるチャーシューを、どうして醤油で煮込んだのかというと、 和歌山ラーメン(屋体系)の老舗に、豚骨を醤油で煮込んで味の柱にする店があるという話を聞いたからでした。 面白そうだったので、せめてチャーシューだけでも醤油で煮てみようと思ったのです。
「塩辛くなってとても食えないものになったらどうしよう・・・」
と恐る恐る40分間煮込んでみたのですが、結果としては大成功でした。 全然辛くないんです。 切り分けたところがページトップの図になりますが、 辛くないどころかマイルドな風味がして、なんとあの名作「東海林風チャーシュー」を超える旨味を持つチャーシューが完成してしまったのです。
本件とまったく関係はありませんが、この醤油煮込みチャーシューは酒肴の新定番として、我が家で大いに活躍しています。 このチャーシューだけでも作ってみてください、味は保障します。
旨い理由としては、湯で煮るときよりも肉の旨味の流出が少ないからだと思います。 東海林風は茹でてから醤油に漬け込むので作るのにその合計の時間が必要ですが、 今回のチャーシューは40分煮るだけで完成しますから簡単でもあるんです。
煮込んだあとに残る醤油には、豚の旨味がわずかながら流れ出ていますので、後ほど醤油だれとして活用します。
和歌山ラーメンといえば赤いフチを持つかまぼこです。 花形のかわいらしいのを欲しかったのですが売ってなかったので、板カマをスライスして用います。
そのほかのトッピングとしてはメンマ、ネギといったところです。
和歌山ラーメンといえば早寿司です。 鯖の押し寿司等がテーブルの上に置かれてあり、自由に手に取りいくつでもつまみ、勘定の際に自己申告するというシステムになっています。
今回はバッテラをこしらえて小分けにし、テーブルの上に積み上げました。 ラーメンの完成を待つ間に、八方から手が伸びます。
よく温めておいた丼に、チャーシューの醤油を注ぎます。 そこへグラグラ沸き立つスープを注ぎます。
麺を大鍋で4分茹でて、湯切りし、丼の中へ流し入れます。 麺をいなし、チャーシュー、カマボコ、メンマ、ネギをトッピングしていただきます。
和歌山ラーメンを作り、当時を懐かしむ。
12/04/07