これまで酒場のお通しについてはコチラやアチラでさんざん語ってまいりましたところ、こないだ新宿の老舗に伺った際出されたものは秀逸でした。 なんでも名だたる文人が愛した店だそうで。
歴史のフィルターにさらされた IT(それ)は一切のムダが省かれており体に優しく、お店の愛情にあふれているものでした。
こんなお通しならいつでも歓迎です。
余談ですが先日、関西と九州で相次いでソックリなダメ酒場に出くわしまして。
どちらも日本酒をウリにしておきながら、メニューに載ってる銘柄のほとんどを置いていないのです。 「味の好みを言ってもらえたらお出しします」という言い訳の基に(メニューや店先の看板に並んでる酒はあくまでも見本だと言い放つ所もソックリです)。
ズラリ銘柄を揃えたお店の方がそう言うのなら分かりますがね、わずか数本のストックしかしておらずに「味の好みを」と言われてもぜひお断りしたい次第です。 もちろん一杯だけ飲んで逃げるように店を出ました。
どちらの店も、まったく愛のないお通しが出てきた事も印象的です。
「とにかく席料を稼ぎたいンですワタシ!」と、出されたものを見るだけで聞こえてきそうなみっともない小鉢で、使われた食材が気の毒です。
市販の野沢菜漬けの上にカツオブシとシラスを散らして醤油を回しかけたもの。 野沢菜は塩辛くケミカルな味がして、カツオブシを散らすのならばシラスは要らず、どちらか一方だけを用いたほうが野沢菜が活きるのにそれに気づかず、あげくは醤油をあらかじめたらしているから、ただでさえ辛い野沢菜がつまめたものではない味になってしまっています。
きっと味見すらしていないんでしょうね。
もうひとつの店では白菜を油で炒めてカツオブシを散らした煮びたし風なものが出てきましたがこれも笑っちゃうくらいマズかったですよ。 こんな油まみれなモノつまみながら日本酒が呑めるかと。
まとめると、良い店は良いお通しを出すし、良くない店はやはりそっちなお通しが出てくるという事になりますつまり、お通しを見れば店が分かるという事です。
では老舗のお通しの件に戻りましょう。
私が酒の師と仰いでいる元祖カープ女子、佐々木久子さんの名著『酒縁歳時記』にこうあります。
日本には昔から「お酒には酢のもの」という伝承の格言がある。
〜中略〜
私自身、お酒を飲むとき、酢のものがないと何か酔いの具合がおかしいし、翌日、身体がだるいように感じるのである。
今回ご紹介する酢の物を佐々木さんに差し出せば、きっと大喜びしてくれる事でしょう。
オクラをサッと塩茹でします。
ザルにあけたら流水で冷まして水気を切り、小口切りにしていきます。 オクラを器に入れて酢をたらしたら、ネバリが出るまでしっかり混ぜましょう。
トロトロしたら細切りの人参を加えて混ぜ合わせますが、この際人参は丁寧に包丁で細かく刻むより、目の細かいおろし金でかいたほうが断面が複雑になり味がしみやすいものです。
ワカメもあえたら醤油をたらし、ゴマを加えてしっかり混ぜたら完成です。 小鉢に入れて差し出せば、酒徒ならきっと顔がほころぶハズです。
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19/11/09