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どんどん焼きを焼く池波正太郎氏
どんどん焼きを焼く池波正太郎氏

どんどん焼き

どんどん焼きを知ったのは、池波正太郎さんの食卓の情景を読んでからです。

どんどん焼きとは何か?池波正太郎さんはこういいます。

いわゆるお好み焼きであるが、われわれ東京の下町に生まれ育ったものにとって、このどんどん焼きほど、郷愁をさそうものはない。

なんだ、お好み焼きのことなのか。 と早合点してはいけません。  「池波正太郎の食卓」という池波さんの書生をつとめた佐藤隆介氏、 天ぷら職人の近藤文夫氏、たいめいけんの茂出木雅章氏による本があります。

その中で、池波さんはこう言ったとあります。

いまのお好み焼のごとく、何でも彼(か)でもメリケン粉の中へまぜこんで焼きあげる、というような雑駁なものではない。(食卓の情景にありました)

うーんなるほど。 「お好み焼とは似て非なるもの」というところでしょうか。

どんどん焼きとは何なのか?

どんどん焼き

上の画像は池波正太郎さんが書いた「むかしの味」の巻頭にあった写真をスキャナで読み取ったものです。  どんどん焼きを焼いている池波正太郎さんです。

オイはこの写真を見て、どんどん焼きを作ってみようと決心しました。 こういっては失礼かもしれませんが、写真の池波さんはまるで模型作りに熱中している少年のように見えました。  どんどん焼きに対する思いの深さが感じとれました。 「むかしの味」にも、どんどん焼きの記述があります。

私たちがどんどん焼きとよんでいた、いわゆるお好み焼の屋台では、最低のエビ天、イカ天、肉のないパンカツなどでも二銭とられたものだ。  子供たちがもっとも好んだのは、このどんどん焼きだったろう。

なるほど。 どんどん焼きは、お好み焼きの屋台なんですね。 屋台のお好み焼きなんて初めて聞きました(そういえば縁日では「箸巻きお好み焼き」というものがありますよね)。

どんどん焼きの正体はあっさり判明したことだし、それではまた来週! というコーナーではありません。 一口にどんどん焼きといっても様々な種類がありますので、それらを解説してみます。

※昭和初期から10年代にかけて、東京の下町にどんどん焼はあったそうです。(食卓の情景より)


どんどん焼きの材料

ベースはメリケン粉(小麦粉)を溶いて卵とあわせたもので、牛ひき肉のボイル、イカ、干しエビ、食パン、牛豚生肉、揚玉、キャベツ、タマネギ、鶏卵、こしあん、乾燥麺、 豆餅等が使われるそうです。(食卓の情景より)

お好み焼きと共通するものが結構ありますよね。 以下どんどん焼きのメニューの数々です。


パンカツ

食パンを三角形に切ったものへ、卵を入れて溶いたメリケン粉を塗って焼き、ウスターソースをかけたものです。

このパンカツの「上」は、牛のひき肉をのせて焼くそうです。

カツレツ

鉄板にメリケン粉を小判形にのばし、その上に牛や豚の生肉の薄切りをのせ、 メリケン粉をたらし、乾かないうちにパン粉をふりかけて、両面を焼いたものです。 (むかしの味に写真が載ってますが、作り方の説明とちょっと感じが違います。)


おしる粉

鉄板にメリケン粉をほそながくのばして、上から豆餅と餡をのせて巻き込み、焼いたものです。

やはりむかしの味におしる粉の写真が載っていましたがそれではタコの足をぶつ切りにしたものが乗せられているようでした。  ちなみに池波少年は豆餅を入れた「餅てん」が大好きだったそうです。

食卓の情景には、 上記を焼いたものをハサミで小さく切って、容器を焼き上げ、そこへ切ったものを盛り、黒蜜をかけまわすとあります。 うーん・・・。


牛天

メリケン粉の中に材料を混ぜ込むのは牛天のみで、牛ひき肉とネギを入れて混ぜあわせ、焼き、ウスターソースで食べる、とあります。

イカ、エビを焼くときは、かならず、メリケン粉を小判型に鉄板に引き、その上から材料(イカ、エビ)を乗せ、さらに上からメリケン粉をかけまわしてから両面を焼く、とあります。


オムレツ

ベースのメリケン粉に卵を割り落として焼き、長方形にたたんでソースをかけます。


キャベツボール

キャベツと揚げ玉を炒めたものです。


やきそば

現代の焼きそばとほとんど同じ。


鳥の巣焼

これは当時12歳の池波少年が発明したメニューで「おじさん、こういうの、やってごらんよ」と池波少年がどんどん焼屋のおじさんにすすめたところ、すぐにやってみて「こいつは売れる」という話になり、 屋台のメニューになったものです。

鳥の巣焼の作り方は「(茹でた)じゃがいもをよくつぶして焼いて、真ん中へ穴をあけて卵を割り落とし、半熟になった頃食べる」とあります。

この屋台のおやじ(当時三十代)は男前だけどちょっと大変な人物だったようで(詳しくはむかしの味食卓の情景を御覧ください)、 時折店をほっぽりだして、どこかへ行ってしまうそうです。  「何でも好きなものを焼いて食っていいから」と池波少年に店番をまかせていたのだとか。

池波少年は接客対応もこなし、どんどん焼きを焼いて少年たちに売っていたそうです。

※茹でたジャガイモをさいの目に切り、キャベツと炒めた「ポテトボール」も池波少年の発明だそうです。

鳥の巣焼

ということで鳥の巣焼きを作ってみました。 じゃがいもをよくつぶして…とありましたが、 むかしの味の写真を見る限りそうではなかったのでこのようになりました。 塩、黒胡椒を振りかけて食べました。  半熟卵が乗ったハッシュポテトといったところです。


たかがどんどん焼き、されどどんどん焼き

どんどん焼きは大人にも人気があったそうで、各店味が違い、美味しい店もあればそうでない店もあったようです。

「町田」という評判のどんどん焼屋がおり(男前のおやじとは別)、元々洋食屋をやっていたそうで味がよそと一味違い、 池波少年は一時期この町田へ弟子入りしてどんどん焼屋になろうと考えたこともあったそうです。


どんどん焼きまとめ

以上、どんどん焼きでした。 繰り返しますが、どんどん焼きはお好み焼きの屋台なのです。  あれ、むかしの味に気になる記述が・・・

こうした戦前の、東京の下町のどんどん焼きは、いま流行のお好み焼きとは全くちがう。

・・・だからやっぱりお好み焼きと、どんどん焼きは別モノです! ここで登場するのが池波正太郎さんの元書生、 佐藤隆介氏の池波正太郎の食卓です。 どんどん焼きを再検証します。


佐藤隆介氏は、昭和11年東京生まれですが、どんどん焼きをいっぺんも食べたことがないそうです。 池波さんの説明によると、昭和初期から10年代にかけてどんどん焼きはあったそうですから、 時代的には食べたことがあってもよさそうなのですが、ないと。

しかし佐藤氏と同年齢の料理人の方が「どんどん焼きならなんでも聞いてくれよ!」と乗り出してきたそうです。

彼の説明によると、どんどん焼きはもんじゃ焼きよりもランクが上で、どんどん焼きは具を少なく作るのが東京スタイルであり、何故どんどん焼きという名がつけられたのかというと、 なにやら中国の故事に由来するのだが、肝心なところは忘れちゃった。 ということです。

※ちなみにもんじゃ焼きの由来は粉が少なく、水が多めで、鉄板にさらさら字がかけることから文字焼き→もんじゃ焼きとなったのかもよと同年齢の料理人氏。

ここで佐藤氏はたいめいけんの茂出木氏にどんどん焼きの話を持ち込みました。

茂出木氏は下町の老人たちをたずね、どんどん焼きについていろいろ聞いてみましたが、皆それぞれ言うことが違い、なおかつ皆それぞれが「自分の作り方が正しいのじゃ」というそうです。

要は、どんどん焼きに決まった型はなく、それぞれ思い思いに焼くのがどんどん焼きなんだ! 「今からどんどん焼きを作ります」と宣言し、 自分の好きなように焼いて食えば、すなわちそれがどんどん焼きなのです! と大体このような結論を茂出木氏は出しました。

さらに茂出木氏はどんどん焼きの名前の由来については「焼く際に上から木ベラでドンドン叩くからどんどん焼きでしょう。」といいます。 ここで茂出木氏オリジナルのどんどん焼きにとりかかります。

茂出木氏はたいめいけん店主であるからして、作りだすどんどん焼きもやはり洋風になるのです。 以下洋風どんどん焼きの作り方を参考にしながら、オイもどんどん焼きを一枚焼いてみます。


牛乳

洋風どんどん焼き

面白いのは生地に牛乳を用いるところです。 お好み焼きを作るときのように、 小麦粉、卵、山芋を用いますが、そこへ水、もしくはダシを加えるのではなく、牛乳を注ぐのです。


トマト

具に湯むきしたトマトや牛ひきにく、ベーコンを用いるところも面白いです。


ひき肉

牛ひき肉とベーコンはあらかじめバターで炒めておいてから、生地に混ぜ込みます。

※炒める際にローリエを放り込んだりします。


どんどん焼きを焼く

そのほか具材として、キャベツ、タマネギのせん切りを生地に混ぜ込んで、お好み焼きように両面こんがりと焼き上げます。 その際に、木ベラでどんどん叩くのを忘れないでください。  どんどん焼きですからね。


どんどん焼きソース

焼きあがったどんどん焼きにつけるソースはウスターソース1にトマトケチャップ2を混ぜ込んだものです。 これをおたふくソースに混ぜると、若干手作りっぽい風味になります。


洋風どんどん焼き

洋風どんどん焼きの完成です。 マヨネーズをかけたらまさにトッピングのないお好み焼きです。 たとえこれに青海苔やカツオブシ、 テンカスを散らしたとしても、どんどん焼きはどんどん焼きなのです。 いつもとちょっと違うお好み焼きを楽しみたいときにオススメです。


最後に池波正太郎の銀座日記にありましたどんどん焼きの記述を引用して終わりたいと思います。

今日の夕食には、久しぶりにどんどん焼きをする。

食卓の前の鉄板で、カツレツ、餅天、牛天、オムレツ、やきそばなどを自分でつくりながら食べ、酒をのむ。 そのいそがしいこと、まるで体操をしているようなものだ。


以上、食卓の情景むかしの味池波正太郎の銀座日記池波正太郎の食卓を参考にこのページを作りました。  ありがとうございました。


どんどん焼きのツボ

  • 縁日のどんどん焼きもどうぞ!
  • 自分の好きなように焼く。
  • どんどん焼きは細かく切った牛肉を薄く溶いた小麦粉に混ぜ、焼いて食べるものです鉄板で。

おさらい

オリジナルのどんどん焼きを作ればよい。

08/08/26


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