ある日のこと。 晩酌の肴を調達にスーパーへ出かけました。
「今日は〜♪ 何が売っているのやら〜っと。」
スーパー内をウロウロしていると、鮮魚コーナーに、まさに「新鮮」を絵に描いたような真サバが売ってありました。 「おっ! このサバのまた綺麗かね。」 サバは白いトレーに入れられていて、ピンと、パンパンにラップをかけてあります。 見た目的には型もよく目も綺麗で、 申し分ないサバでした。
トレイに入っているためにサバを手で実際に触ることはできませんが、ラップの上から腹の部分を指で軽く押して、鮮度の最終チェックをおこないました。 まさに水揚げされたてという風に、 パンパンに固く、適度に弾力もありました。 「よし、今日の肴は〆鯖にしよ!」と、喜んでそのサバを購入し、家に急いで帰りました。
玄関のドアを開けるや否や、キッチンに直行し、シメサバの準備にとりかかります。 ラップを破り、パックからサバを取り出し、まずははらわたを抜こうと 包丁を入れたそのときっ、悲劇はおきました。 これだけ新鮮なサバなのに、内臓が原形をとどめでいないではありませんかっ! ドロッ。 っというふうに 「かつて内臓だったもの」は流しに落ちました。
〆サバ歴4年のオイは、このサバは身もおかしいに違いないと確信を得て、3枚におろしてみるとやっぱりそうでした。 こんなモノを買ってしまった己の未熟さにただ呆然と立ち尽くし、ビールを一口のんでから、サバの死体をゴミ箱にほうり込みました。
このような事がありました。 ラップがピンッと張られていたので、その上から魚に触れてみると、鮮度良くピチピチ魚という印象を受けてしまったのです。 しかしこれはラップの張力によるピチピチであって、肝腎な魚のものではありませんでした。 グニャグニャで、「このサバ焼いても食えないのでは?」という状態でした。
それ以来、オイはパック入りの魚を買うのは一切やめて、丸のままむきだしで販売されている魚にしか手を出さないようになりました。
しかし、である。
普通それほど弱った魚というものは、まず見た目だけである程度鮮度の予測ができます。 でも、上記の真サバは新鮮そのもののようでした。 これは一体なにを意味するのか? そう、添加物の存在であります。
愛読書「あぶない食品」によると、この世には鮮度保持剤なるものがあり、ビタミンC、E、重炭酸ソーダ、リンゴ酸ソーダ、クエン酸ソーダ等で作られて いるのだとか。 厚生省はこれを食品添加物としては認めており、安全性には問題ないという。
うーんどうなんでしょうか。 単に消費者の目をごまかすためだけに使われても困るっちゅー話なわけです。 たとえその成分が無害であっても、 「生けるがごとき魚の死体」を作ると、あぶない食品の著者:溝口敦氏は書いておられます。
結局、この鮮度保持剤は使用中止になったそうですが、使用中止であり、製造中止ではないワケです。 鮮度保持剤を構成する個々の成分は無害なので、禁止のしようがないと厚生省は言う そうです。 鮮度保持剤は無味無臭であり、恐ろしいことに使っていても表示義務がないそうです。
デパートやスーパーの塩干しコーナーにはさまざまな一夜干しが売られていて、にぎやかで、大好きなわけですが、手にとってみると、材料に魚、塩、ビタミンCとか書いてあります。 「ふーん、ビタミンCの入っとるとね。 酸味つけるため?」と思っていたら、こういう理由があったというわけです。
今の世の中、無添加食品のみで生活するというのは不可能だと思いますが、なるべく自然をそのまま味わいたいなと考えます。
よって今回の一夜干しは、信頼できる魚屋さんで実際に手にとって、吟味した魚で作りたいと思います。 長くなりましたが作業開始とします。
アジを例に始めてみます。
できることならば新鮮な、刺身でイケるような魚を用意します。 新鮮ならば、煮ても焼いても生でも美味しいわけです。 アジには細かいウロコが沢山あるので包丁もしくはウロコとりではがして、エラ、内臓、ゼイゴを取ります。 その後丁寧に水洗いをしておきます。
はらわたを取るまでの工程は、魚の三枚おろし →に動画をまとめてありますので参照下さい。
とりあえず中骨まで包丁を入れます。 今回は腹側から魚をひらく腹開きなのです。
包丁を入れるにしたがって、魚が開きやすくなってくると思うので、指で開きながら、腹骨部分に包丁を入れます。
腹骨部分に包丁を入れるとこのような感じに開けます。
包丁を180度反転させて、頭を真っ二つにします。 少々固いので注意します。 ここまで作業をすすめると、魚はもうすでに開けているハズです。
仕上げとして、骨に沿ってもう一度全体に軽く包丁を入れて、開きの姿を美しくしましょう。
これでアジの腹開き完了。 次は塩漬けであります。
さて、開いた魚に塩をしましょう。 一夜干しを作る際に使われる手法として、ふり塩と、たて塩があります。
振り塩は、開いた魚に直接塩をパラパラと振り掛ける方法であり、たて塩は塩水を作りそのなかに魚を漬けこむ方法です。
今回、塩の風味が均一になり、なおかつ塩辛くなりすぎないという利点のあるたて塩で行います。
※ふり塩で作る場合は開いた魚の両面に、塩焼きをするときと同じ程度の塩を振ってから30分程度おきます。 滲み出てきた水気を水洗いしてからザルに広げて1時間程干します。
まず小さいコップを用意しましょう。 それに、すりきり一杯の塩を入れます。
その塩を、用意しておいたトレイにいれます。 次に、塩を入れたコップを使用して、水をすりきりいっぱい注ぎ、 それを塩を入れたトレイに流し込みます。
水をコップに注いでトレイに流し込む作業をあと5回続けると、塩と水の割合が1:6となります。
簡単にいうと、塩1杯と水6杯をひとつのトレイに入れて、塩が溶けるまでよくかき混ぜます。 こうして作った塩水に、 魚を漬け込むというわけです。 さあ、開いた魚を塩水に漬け込みましょう。
魚を漬け込んでから20分経過したころ、塩水から魚をあげて、水気をよくきり、干します。 この際、ついうっかり天日干しをしてしまいそうになりますが、直射日光をさけ、風通しの良いところに干すようにします。 熱すぎる場所に干すと魚を痛めます。
※干す際、お好みで魚の身にゴマをまぶしつけたりするとおいしくもあり楽しくもあります。
頃合をみて、魚を取りこみます。
干し加減の目安としては、身を指で押すと指紋がかすかに残る程度(お好みでどうぞ)。 あんまりカラカラに干すのももったいないような気がします。 干すことにより身が艶っぽくアメ色に変化しています。 もうすでに旨いということがわかります。
いくら素晴らしい一夜干しができあがったとしても、焼くのに失敗してはどうしようもありません。
焼き方は、味噌漬けのタチウオや 鳥モモ肉を焼いたときのように金属製の蓋で覆いながら直火で焼くとよいです(めんどくさかったらグリルでどうぞ)。 この方法は、いついかなる魚を焼くときでも魚を上手に焼く秘訣だと北大路魯山人は言います。
市販品とは『照り』が違います。 別の食べ物といっても過言ではないでしょう。 朝食のお供にしたり、 酒の肴にしたり、どのようにもできるばい。
カマスも一夜干しにはもってこいの魚です。
アジと同じように開いて、塩水に漬けます。
塩水につける際、塩水を大量に作るのはもったいないので、魚がヒタヒタに浸る最低限の分量の塩水に漬け、上からキッチンペーパーを載せると 満遍なく、しかも無駄なく魚に塩することができると、近所のおばちゃんは言います。
市販の真空パックで漬けるのもひとつのテです。
塩水につけた後、干します。 上で20分と書きましたが、絶対ではありません。 食べてみて、お好みで調整するとよいです。 塩と水の量を計って、 キチンと数値を割り出しておくのもよいかと思われます。
カマスは身離れがよくて。
イワシのミリン干し
イワシなんかはみりん、醤油、砂糖、塩少々に20分ほど漬け込んで、ゴマなんか振ったうえでサッと干すと旨いです。 魚の大きさや脂ののり具合で漬け込む時間は調整 します。 脂が多い場合は、長めに漬けるとよいです。
今回掲載しった魚の開き方は腹開きですが、背開きという方法もあります。
その名の通り、腹から開くか背からか開くかの違いだけです。
行きつけの飲み屋の常連に、自称元百貨店の仕入れ担当者という爺様がおりまして、その人物が言うには、 背開きのほうが魚が大きく見えて見栄えがよいの売りやすかった、らしいです(写真上腹開き、下背開き)。
イカを使っても一夜干しは簡単に作ることができます。 今回イカはスルメイカを使用しておりますが、別に何イカだってかまいません。 丁寧におろして掃除して、魚のように塩水にしばらく浸しておき、 干すだけであります。 イカのさばき方→
もうね、美味しいに決まっています。 干し加減はお好みでどうぞ。 そういえばイカを味噌漬けにするというテもあります。
自作した一夜干しのおいしさには思わず目を見張るものがあります。 しかし、魚をおろすのも面倒だし、塩加減もわからんしあー……。 でも旨い一夜干しが食いたい!
という方にとっておきの方法をお教えしましょう。 まずは買い物へ出かけて、なるべく美味しそうな一夜干しを買ってきます。 そして急いで家に帰り、焼く際に、ナンプラーもしくはニョクマム をハケで塗りながら焼くのです(なければショッツルでも可)!
いわば即席のクサヤになると、東海林さだお氏は丸かじりシリーズでおっしゃいます。 ちなみにしょっつるを使用する際には少し塩がキツすぎるので、日本酒で割るのだとか。
05/11/20