自分で作ればまさに「目からウロコ」、干物ってこんなに美味しい食べ物だったんだァー! と感極まる事うけあいです。
アジを例に始めてみます。
できることならば新鮮な、刺身でイケるような魚を用意します。 新鮮ならば、煮ても焼いても生でも美味しいわけです。 アジには細かいウロコが沢山あるので包丁もしくはウロコとりではがして、エラ、内臓、ゼイゴを取ります。 その後丁寧に水洗いをしておきます。
はらわたを取るまでの工程は、魚の三枚おろし →に動画をまとめてありますので参照下さい。
包丁を入れるにしたがって、魚が開きやすくなってくると思うので、指で開きながら、腹骨部分に包丁を入れます。
腹骨部分に包丁を入れるとこのような感じに開けます。
包丁を180度反転させて、頭を真っ二つにします。 少々固いので注意します。 ここまで作業をすすめると、魚はもうすでに開けているハズです。
仕上げとして、骨に沿ってもう一度全体に軽く包丁を入れて、開きの姿を美しくしましょう。
これでアジの腹開き完了。 次は塩漬けであります。
さて、開いた魚に塩をしましょう。 一夜干しを作る際に使われる手法として、ふり塩と、たて塩があります。
振り塩は、開いた魚に直接塩をパラパラと振り掛ける方法であり、たて塩は塩水を作りそのなかに魚を漬けこむ方法です。
今回、塩の風味が均一になり、なおかつ塩辛くなりすぎないという利点のあるたて塩で行います。
※ふり塩で作る場合は開いた魚の両面に、塩焼きをするときと同じ程度の塩を振ってから30分程度おきます。 滲み出てきた水気を水洗いしてからザルに広げて1時間程干します。
まず小さいコップを用意しましょう。 それに、すりきり一杯の塩を入れます。
その塩を、用意しておいたトレイにいれます。 次に、塩を入れたコップを使用して、水をすりきりいっぱい注ぎ、 それを塩を入れたトレイに流し込みます。
水をコップに注いでトレイに流し込む作業をあと5回続けると、塩と水の割合が1:6となります。
簡単にいうと、塩1杯と水6杯をひとつのトレイに入れて、塩が溶けるまでよくかき混ぜます。 こうして作った塩水に、 魚を漬け込むというわけです。 さあ、開いた魚を塩水に漬け込みましょう。
※当然ながら、上質な塩を用いれば味がグッとよくなります。
魚を漬け込んでから20分経過したころ、塩水から魚をあげて、水気をよくきり、干します。 この際、ついうっかり天日干しをしてしまいそうになりますが、直射日光をさけ、風通しの良いところに干すようにします。 熱すぎる場所に干すと魚を痛めます。
※魚を開いた日の夜だけ夜風で干す一夜干しもあれば、開いた翌日の日中にかけて干す場合もあります。 直射日光に当てて一気に干してしまう天日干しの手法も気候風土に よっては行われるそうです。
※2 最近お気に入りのたて塩の割合:水1リットルに対して塩50g(5パーセント)を溶かし込み魚を30分漬けた後干します。 うっすらした塩加減で老若男女に好評です。
頃合をみて、魚を取りこみます。
干し加減の目安としては、身を指で押すと指紋がかすかに残る程度(お好みでどうぞ)。 あんまりカラカラに干すのももったいないような気がします。 干すことにより身が艶っぽくアメ色に変化しています。 もうすでに旨いということがわかります。
いくら素晴らしい一夜干しができあがったとしても、焼くのに失敗してはどうしようもありません。
焼き方は、味噌漬けのタチウオや 鳥モモ肉を焼いたときのように金属製の蓋で覆いながら直火で焼くとよいです(めんどくさかったらグリルでどうぞ)。 この方法は、いついかなる魚を焼くときでも魚を上手に焼く秘訣だと北大路魯山人は言います。
火加減は強火の遠火というのが定説になっておりますが、弱火で焼き加減をみながらじっくりと焼いたほうが失敗しない、 という話もあります。 まずは身のほうから焼いて、次に皮側を焼きます。
見事焼きあがった干物は市販品とは『照り』が違います。 別の食べ物といっても過言ではないでしょう。 朝食のお供にしたり、 酒の肴にしたり、どのようにもできますけんね。
※焼き方として、ガスコンロに焼き網を乗せたり、魚焼きグリルを使ったり、オーブントースターなどがあげられます。
カマスも一夜干しにはもってこいの魚です。
※3パーセントの塩水に40分程度浸しておいて干せば格別です。
アジと同じように開いて、塩水に漬けます。
塩水につける際、塩水を大量に作るのはもったいないので、魚がヒタヒタに浸る最低限の分量の塩水に漬け、上からキッチンペーパーを載せると 満遍なく、しかも無駄なく魚に塩することができると、近所のおばちゃんは言います。
市販の真空パックで漬けるのもひとつのテです。
塩水につけた後、干します。 上で20分と書きましたが、絶対ではありません。 食べてみて、お好みで調整するとよいです。 塩と水の量を計って、 キチンと数値を割り出しておくのもよいかと思われます。
カマスは身離れがよくて。
イワシなんかはみりん、醤油、砂糖、塩少々に20分ほど漬け込んで、ゴマなんか振ったうえでサッと干すと旨いです。 魚の大きさや脂ののり具合で漬け込む時間は調整 します。 脂が多い場合は、長めに漬けるとよいです。
今回掲載しった魚の開き方は腹開きですが、背開きという方法もあります。
その名の通り、腹から開くか背からか開くかの違いだけです。
行きつけの飲み屋の常連に、自称元百貨店の仕入れ担当者という爺様がおりまして、その人物が言うには、 背開きのほうが魚が大きく見えて見栄えがよいの売りやすかった、らしいです(写真上腹開き、下背開き)。
ということで、次はイサキを例に背開きで干物を作ってみたいと思います。 さらにはご飯と炊いたりもしてみます。
イカも干してみます。
自作した一夜干しのおいしさには思わず目を見張るものがあります。 しかし、魚をおろすのも面倒だし、塩加減もわからんしあー……。 でも旨い一夜干しが食いたい!
という方にとっておきの方法をお教えしましょう。 まずは買い物へ出かけて、なるべく美味しそうな一夜干しを買ってきます。 そして急いで家に帰り、焼く際に、ナンプラーもしくはニョクマム をハケで塗りながら焼くのです(なければショッツルでも可)!
いわば即席のクサヤになると、東海林さだお氏は丸かじりシリーズでおっしゃいます。 ちなみにしょっつるを使用する際には少し塩がキツすぎるので、日本酒で割るのだとか。
塩をして数時間干している間にタンパク質が変質し、粘性の高い状態になるからです。 粘性の出た身を焼くと、弾力性が出て身離れもよく、旨いんです。 塩分濃度は2〜5%が頃良い感じです。
ある日のこと。 晩酌の肴を調達にスーパーへ出かけました。
店内をウロついていると、鮮魚コーナーに、「新鮮」を画に描いたような真サバが売られていました。 白いトレーに入れられており、ピンとラップを張ってあります。 見た感じ型もよく目も綺麗で、申し分ないサバでした。
ところがいざおろしてみると、非常に鮮度の良くないサバでして・・・やはり魚を買うには実際手に取ってみないとダメだという教訓を得たのです。 ピッチピチだと思った指ざわりは、ラップによる演出だったのでした。
以来、パック入の魚を買うのは一切やめて、丸のままむきだしで販売されている魚にしか手を出さないようになりました。
しかし!です。
普通それほど弱った魚というものは、まず見た目だけである程度鮮度の予測ができます。 でも、上の真サバは新鮮そのものに見えました。 これは一体何を意味するのか・・・? そう、添加物の存在です。
「あぶない食品」によると、この世には鮮度保持剤なるものがあり、ビタミンC、E、重炭酸ソーダ、リンゴ酸ソーダ、クエン酸ソーダ等で作られています。 厚生省はこれらを食品添加物として認めており、安全性には問題ないといいます。 まさに「生けるがごとき魚の死体」を作る事のできる奥の手です。
鮮度保持剤は無味無臭であり、恐ろしい事に使っていても表示義務がありません。
デパートの塩干コーナーには様々な干物が売られていて、にぎやかで、大好きなんですが、手にとってみると、原材料に魚、塩、ビタミンCと記されています。 「ふーんビタミンCか。 ほのかな酸味つけるため?」と思っていたら、こういう理由があったわけです。
今の世、無添加食品のみで生活するのは不可能だと思いますが、なるべく自然をそのまま味わいたいと考えます。
05/11/20