鶏肉は牛豚魚とあわせて献立の中核をなす大事な肉なわけですが、なかなか自分でおろす機会というものがありませんでした。 胸肉はニワトリの胸あたりの肉なんだろうけど 厳密にいうといったいどの辺? なんていう疑問を抱いていたあなた。 早速丸鶏を買ってきてください。 実践することで手っ取り早く理解できます。
今回のさばき方は、柴田書店の鶏料理を大いに参考にさせていただきました。 ありがとうございました。
さてまずは丸鶏を買ってきましょう。 といっても、お肉屋さんやスーパーの肉売り場の店頭にはなかなか並んでいませんので、肉屋の店員さんに直接注文してみました。 すると次の日には丸鶏を 手に入れることができました。 ながさき自然鶏という銘柄です。
厳密にいうと、丸鶏には『丸』と『中抜き』があり、丸とは羽と足先(モミジ)のみを取り除いているもので、内臓は抜かれていないものです。 一方中抜きとは 羽、頭、内臓を取り除いているものです。 まさに呼び名の通りとなります。
本当は丸を欲しかったのですが、中抜きしか用意できないということでしたので、今回は中抜きを使って説明してみたいと思います。
これが中抜きの全貌です。 いまから鶏もも肉や胸肉、ささみや手羽先と切り分けていくわけです。 見た目チョットアレかもしれませんがなーに魚といっしょですよハハハ。
これはちょうどうつぶせになっている状態です。
これは仰向けになっている状態です。 鶏の白蒸しではこのままの状態で使います。
それでは早速さばいてみましょう。 丸の場合、まずは頭を切り落とします。 今回は中抜きなので、頭はついていませんでした。
次はおしりのほうをむけて、ボンという部位を切り離します。 ちょっぴり突き出た尻尾というような部位です。 これは焼き鳥にできるので、大事にとっておきましょう。
※くわしいぼんじりの処理については「ぼんじり」をご覧ください。
次はもも肉を切り分けます。 鶏を横向きにねかせて、ちょうど腰あたりに包丁を入れます。 厳密にいうと腸骨という部位にあたるそうです。
上からみるとこのように切れ目を入れるわけです。
鶏を仰向けにして、モモの付け根に包丁をいれ、皮を切ります。 もう一方のモモも同じように切ります。
両モモの皮に切れ目を入れたら、両手でモモをしっかりと持ち、モモを外側に折り曲げて股関節をはずします。 股裂きにするわけです。 割合簡単にできます。
よく見ると関節がはずれているのがわかります。
あとは骨にそって包丁を進めていき、モモ肉を切り離していきます。 厳密にいうと、骨盤にそって包丁を入れていくわけです。
皮を切ってモモ肉をはずします。
このように鶏もも肉を切り分けることに成功しました。 ようやく見覚えのある形に切り分けられたわけです。
反対側のモモ肉も同じように切り分けます。 はじめに腰あたりに入れた切れ目をガイドにして切り進んでいくとうまくいきました。
2本の鶏もも肉を切り分けることに成功しました。 人生初の快挙です。
さて次は胸肉を切り分けます。 写真は、鶏を仰向けにしているところです。 盛り上がった胸肉が確認できます。 手で手羽を引っ張っていますが、その手羽の根元、すなわち肩あたりから包丁を 入れていきます。
肩関節に的確に包丁を入れたいのですが、素人にはそれを探し出すのに苦労します。 なので手羽を手でつかみ、グルグルと回転させてみます。 すると、肩関節がどの辺にあるのか推測が つきますので、そこから包丁を入れます。 肩関節が見えたら、その周辺に包丁をいれてスジを切っておきます。
手羽を手に持ちしっかりと保持しながら、胸肉を切り分けていきます。 骨に沿って包丁を入れるわけです。
ある程度包丁を入れたあとは、手で引っ張ると胸肉は容易にはずれます。 胸肉の下からムッチリとした肉が現れました。 なんとこの肉は、ササミだったのです! ササミは胸肉の下にもぐりこんでいる という事実を知ることができただけでも丸鶏をさばいてよかったな、と思います。
取り外した胸肉には手羽がついています。
手羽中の関節に包丁を入れて取り外します。
慣れ親しんだ形の手羽先を切り分けることに成功しました。
鶏胸肉にはまだ手羽元がついています。 皮側を下にして、手羽元を切り分けます。
鶏胸肉を切り分けるついでに、手羽先と手羽元を切り分けることに成功しました。
手羽元を切り分けると、見慣れた鶏胸肉になりました。 反対側も同じように切り分けます。
ササミの周囲にある薄膜を包丁の先っちょで切り、首元のほうから指を入れてササミをはずしていきます。
このように割合簡単に引き剥がすことができます。
ササミの切り出しに成功! 2本ありますので反対側もお忘れなく。
骨つき鳥もも肉の活用範囲は広いのですが(油淋鶏)、 骨なしにだって用事があるのです(から揚げ)。
そこで鶏モモ肉から骨をはずしてみることに挑戦してみます。 鶏モモ肉の皮側を下にして、おそらくこの辺に骨があるであろうという部分から包丁をいれていきます。 包丁は先っちょをたくみに操ります。
骨付き鳥もも肉は今まで幾度となく食べてきているわけですから、どの辺に骨があるのかは大体わかります。 その骨にそって、包丁の先っちょを入れて、骨を起こすような気持ちで包丁を入れていく わけです。
骨の両側に包丁をいれていき、骨をむき出しにします。 関節部分にはスジがあり、なかなか切りにくいので注意が必要です。
骨がむき出しになったところで、関節に包丁を入れます。
関節を切り離し、そこから包丁を入れて骨を取り去ります。
残るもう一方の骨も、図のように切り分けます。
足先まで骨を取り外したところで、骨を包丁の刃元を使って断ち切ります。
残った足先を切り離します。
このように、鶏もも肉から骨をはずすことに成功しました。
やった! 中抜きを切り分けることができました。 左手前から鶏モモ肉2枚(表と裏)、胸肉2枚(表と裏)、ボン、足先2本、トリガラ、モモ骨4本、 ササミ2本、手羽先2本(手羽先と手羽中)、手羽元2本という面々。 いやぁー面白かったです。
さて次はトリガラスープが抽出しやすいようにトリガラを処理しておきます。 まずは鶏ガラについている鶏皮をひきはがします。
首の皮までズルズルと引き剥がします。
このように、鶏皮を引き剥がすことに成功しました。
次はトリガラの肩甲骨を起こすように包丁をいれます。 2対あるので両方とも同じように包丁をいれます。
この肩甲骨さがしに少し苦労したのですが、肩関節あたりをくまなく調べれば見つけることができます。
肩甲骨の付け根を持ち、もう片手で首をつかんでおいて、引っ張ると、ガバリと胸側と背側にガラをわけることができます。 文章では表現しづらいですが、このようになります。
胸側のガラの尻尾のほうにはナンコツがついていますので折りはずしておきます。
一方背側のガラの首にはセセリという旨い肉がありますのでそれを包丁で削ぎとっておきます。
さらに背側のガラにはハラミという薄い肉がありますのでそれも切り取っておきます。 焼き鳥にすると旨いのです。 ちょうどアンコウにもこのような肉がありました。
もしかすると背側のガラの内側には背肝と呼ばれる腎臓が残っているかもしれないのでこれも取り除いておきます。 焼き鳥に使えます。
これでトリガラの処理は終了です。 残りのガラは包丁でいくつかに切り分けてトリガラスープの抽出に活用しましょう。
※肉屋に鶏をシメてもらうときは、窒息させるのではなく、頚動脈を切って血を流させる。 その血を米を入れた小皿で受けて、 蒸して大根と豚骨のスープに入れて食べる、という話が邱 永漢『食は広州に在り』にありました。
このようにして中抜き鳥をさばくことができました。 あわせて鶏肉分布図もご覧下さい→
中抜き鳥をさばいてみます。
07/08/03