もうとっくの昔に水炊きのレシピは掲載しているものと思っておりましたが、 それは鶏鍋の勘違いでした。
水炊きを口にしたことがないという方はあまりいないと思いますが、念のために説明しますと、 水炊きとは、鍋で肉野菜を煮て、ポン酢でつまむものです。 骨ごとブツ切りにした鶏を用いたものは、博多の名物料理です。
極めてシンプルな調理法の水炊きには、特にレシピなぞ必要ないような気もしますが、いつも我が家ではこのように仕込んでいます。
水炊きの主役は鶏肉です。 骨付肉を用いることでグンと旨味は増幅しますが、これといった決まりはありません。 手羽でもモモでもムネでもササミでも、 お好みの部位をお使いください。 と、いいながらも強く推奨しますのが、鶏をまるごと一羽使うことです。
鶏の羽、頭、内臓を取り去ったものを「中抜き」といいまして、これを一羽分使ってしまうのです。 そのメリットは、なんといっても美味しく仕上がることです。 さらに部位ごと買い集めるよりも、随分安上がりになりますし。 5、6人で囲む水炊きならば、中抜き一羽で十分です。 千円前後で手に入ると思いますよ。
中抜きをさばきます。
詳しくは鶏のさばき方をご覧ください。 なんだか面倒な作業に思えますが、 慣れてくると魚の三枚おろしよりも簡単です。
さばき終えたら、骨付き肉、骨無し肉、ガラというように三つの山に分けます。
「水たき」というぐらいですから、水で鶏を炊いてもよいのですが、昆布だしを使うとグッと味がよくなります。
あらかじめ昆布を水に浸しておいて、火にかけます。 沸騰寸前に昆布を取り出せば、これが昆布ダシです。
ここでひとつポイントがあります。 それは、大鍋でダシをとることです。
水炊きに使用する土鍋よりも大きな、家一番の大鍋でダシをとってください。 こうすることにより、鍋を囲んでいる最中に水かさが減ってきても、随時ダシを注ぎ足すことができるのです。 これは何も水炊きに限らず、家庭で鍋をやる場合は必須の心がけです。
昆布ダシの中に、まずはガラのみを投入しまして、2時間ばかりとろ火で煮込みます。 鶏がらスープをとるわけです。
中抜きを自分でさばいた場合、おそらく市販のガラよりも肉が余分にこびりついているかと思いますが、これがいいんです。 少量のガラでスープをとる場合、 どうしてもコクに欠けるところがあります。 それを補ってくれるのが、骨にこびりついた肉なのです。
この際、米をひとつまみ加えておいてください。 これにより鶏の臭みが消え、スープにかすかなトロミがついてコクが出ます。 いわゆるひとつの「秘伝」です。
アクをこまめにすくいとり、澄みきったスープを目指します。
完成したスープをこして、土鍋に並々と張ります。 火にかけて、次は骨付きの肉を投入し、煮込みます。
さらに野菜類を加えます。 白菜、春菊、長ネギ、豆腐、何を入れてもかまいませんが、ウチでは超シンプルに、大根一本で勝負することが多いです。
シンプルが故に、鶏の旨味を存分に味わうことができるんです。 大根には鶏のエキスが染みこんで、えも言われぬ旨さになります。
一番最後に、骨無し肉をドッサリと加え、火が通るやいなや、つまみはじめます。 骨付肉はつまむと骨からズルリと肉がはずれるぐらい煮込み、 骨無し肉はムチプツとしたフレッシュな食感を楽しみます。 ガラにも肉が残っている場合、入れちゃっても構いません(小さなお子さんがいる場合は要注意です)。
器にポン酢を張り、小ネギ、 もみじおろし、 柚子胡椒等薬味を駆使していただきます。
11/06/23