古い友人が遊びに来まして家でしんみりと飲みました。 焼酎に、鰹の刺身をつまみながら思い出話に花が咲きます。
鰹談義をしていたら、突如友人はこうつぶやきました「やっぱり今までで一番旨かったのは、奄美大島の鰹だなあ」。
なんでも以前、おばあさんが奄美大島にいたらしく、よく遊びに行っていたそうです。 小舟に乗って沖へ出て、エサもつけずに釣り糸をたらしているだけで、面白いように鰹が釣れたという話です。 釣りたての鰹を刺身にしてよく食べたのだといいます。
うらやましいったらありません。
突然ですが、鹿児島、中でも奄美大島には鶏飯(けいはん)という伝統料理があることをご存知ですか? 「鶏飯」という字だけを見れば、 海南チキンライスや吉野鶏めし、 鴨飯のような食べものをつい思い浮かべますが、全然違うものなんです。
あらかじめ鶏がらスープを煮出しておきます。 そのスープを、醤油、塩少々で調味します。
「鶏飯」というぐらいですから、鶏肉は是非必要です。 お好みの部位を用いればよいと思いますが、 この料理の質的にはササミやムネ肉等脂が少ないところを用いたほうが良いと思います。
用意した肉は茹でて、食べやすい大きさに裂いておきます。 鶏ガラを煮出す際に一緒に煮て、火が通ったら取り出す、という風に調理すると楽だし旨いものです。
※水炊きのように丸鶏を一羽煮て、そのスープと肉を使えば大ごちそうのケイハンができると思います。
干し椎茸を戻しておいて、その戻し汁、みりん、醤油で甘辛く煮付けます。 太巻きの具のような具合です。
本式にはパパイヤの漬物!を用いるそうですが、入手できませんでしたので沢庵で代用します。 紅ショウガを用いることもあるらしいです。
錦糸卵を焼きましょう。
用意した具を眺めると、まるで冷やし中華を作っているかのようです。
具材は出揃いました、早速けいはんをいただきます。 茶漬けのように、茶碗へ軽くご飯をよそいます。 そして周囲に並べた具材の数々を食べる直前にご飯へ好きなだけ乗せ、熱々の鶏がらスープを回しかけます。 すかさず刻んだネギやショウガ、海苔、島みかん等薬味を散らしてかっ込みます。
これは傑作です。 普段ご飯と鶏がらスープを合わせる場合は、 鍋の後の雑炊のように煮込んでしまうことがほとんどなのですが、 炊きたてのご飯にスープをかけてススりこむこの爽快さはまさにお茶漬けです。
ところが味は濃厚で具沢山ときたものですから、けいはんにはそれらしい欠点が見当たりません。 素晴らしい郷土料理です。
更新日:23/05/14
公開日:11/06/30